14.臨時パーティー。
前回の出来事: 聖女の物理攻撃が地面に炸裂した。
なぜか迷宮に聖女と【臨時パーティー】を組んで潜っている俺……。
一体どうしてこうなった?
ちなみにパーティーメンバーは、俺、聖女、聖女のパーティーのイケメン斥候男、――そしてあの老魔女だった。
「ひっひっひ。意外に早い再会だの」
「うるせえババア、なんで俺に付いて来る?」
「そんな邪険にするでない。ワシはきっとお前さんの役に立つ」
確かに老魔女の言う通りで、実はもうすでに世話になっていたりする。
斥候男が迷宮に入ってすぐに魔物探知魔法を唱えたのだが、老魔女が俺に前もって抗魔法してくれてなかったらかなりピンチだった。
俺は魔物探知魔法の対象に入ってるからな。
しかし、聖女のヤツ、いきなり迷宮に飛び込むとはやはりイカれてる。
前を進む小さくも肉感的な美尻を、細い腰をにらむ。
(何て柔らかくて旨そうなケツなんだ。腰も折れそうなくらい細くてよう。犯したい、殺したいっッ!)
外見が最高級なのは確かだ。
【怪人】の俺が持つ「人間の女を犯し殺したい」という本能に実にうったえてくる。
ここんとこ人間の女を犯したり殺したりというのが出来ていない。
そこへ外見だけは上等な人間女――――思わずノドをゴクリと鳴らしてしまった。
正直たまらない。
だが、俺が聖女を襲えば、間違いなく終わりだ。
それだけの力量差が俺と聖女の間にはある。
欲求不満だけが蓄積されていく……
(何でこんな我慢をしないといけないんだ)
これは仲間を、上司を裏切った罰なのだろうか。
聖女がこの迷宮を見つけた時のことを思い返す――――
――――――
――――
――
「《聖拳》!!」
聖女が下に向かって拳を放つと地面が爆散した。
それで危うく俺が死にかけたのはどうでもいい。
砂ぼこりが収まるとそこには現れたのは迷宮が口を開けていた。
「まだ新しいわね。潜るわよ」
「おい待て。俺は行かないぞ」
「高位冒険者は迷宮を発見したら中を探索するのが決まりよ」
「俺は冒険者でも高位でもないんだが」
「わたしだって同じよ。ほら、男の子でしょ。カヨワイ女の子を1人で行かせていいの?」
「 」
こいつバカか、と思ったが逆らえずに後に続いて迷宮に入る。
迷宮に入るなんて俺にとっては初めてだから何も分からないが、聖女によると通路の大きさや新しさから判断して、まだ出来たばかりの赤ちゃん迷宮らしい。
「わたしが足を置いたところだけを歩いて」
聖女は《罠避け》の常時発動型スキルを始め、幸運系のスキルを軒並み【人間の神】から与えられているという。
なんでもありだな。
というか、その人間の神とやらの所為でこんな無謀で猪突猛進な迷惑人間女が出来あがったというわけか。
今すぐ出てきて責任取りやがれ。
聖女によると、高位冒険者の務めとして、新しく発見された迷宮は早急に危険度を判断しなくてはならないらしい。
そして、この迷宮はというと――――
「2階層目でゴブリンに混じって【ホブゴブリン】……これは【危険度A~S】ね。どう見ても赤ちゃんなのに異常だわ」
どうやらヤバいらしい。
まだ浅い階層にもかかわらず、出てくる魔物に強力なのが混じってるのだという。
ちなみに、ホブゴブリンはゴブリンの上位種だ。
もちろんあの【ゴブリン男】の方が百倍強い。
「すぐ村に戻ってパーティーを組み直すわよ。出直して魔物を間引きましょう」
「そうか。頑張れよ」
「何言ってるの。あなたも【発見者】でしょ」
「なっ」
いつの間にか俺は逃げられない立場になっていた。
「というか、服、【支援部隊】から支給させるわ。お給金も」
「俺は、」
いらない――――というセリフは思いとどまった。
魔族の上司から追われている今、人間の服と金は必要になる時が来る。
ここでソレを手に入れておくのは悪くない選択肢かもしれない。
アサナ村に戻ると【勇者パーティーの支援部隊の宿舎】に通される。
いつの間にこんなデカい建物を建てたんだ?
宿舎の中に入っていくと【草で編んだだけのお面】を着けて、【ヒモ状の蔓の下着】をしただけの俺の姿を見た人間の兵士たちが、ザワっとする。
「へ、ヘンタイ……」
ナニを見てるんだ人間の女兵士。
そのデカい乳揉みしだきながら犯して殺すぞ。
宿舎の中には十数人の人間がいて、俺の目には獲物の群れにしか見えなかった。
しかしふと思ったのだが、今の俺には『殺せ』という命令はない。
思い返せば、命令無しで人間を殺したことはなかった。
(うっ……)
頭が痛くなってきたので、そこで考えるのはヤメにした。
難しいことは後回しにしよう……
聖女が新品の服を支給品から選んで次々に渡してくる。
ん? これは……
明らかに一般兵士用じゃなく高官用の高級品じゃないか。
「なあ。アッチの地味な方でよくないか」
「いいのいいの。あなた顔隠して怪しいんだから、これくらいでいいの。それにこっちの方が絶対似合うと思うし……」
聖女は相変わらず最後の方がモゴモゴしててよく聞き取れないな。
「どこか着替えられる部屋あるか?」
「え、あっ? あっ、そうね。あなたでもさすがに皆が見てるところで着替えられないわよね。こっちの部屋が使えるわ」
どうも右腕の色が、人間の肌色にうまく化けれなくなっている。
この緑色はどう考えてもグリーンスライムの色なんだよな。
「治癒してもらった右腕がダメになりました」とは、さすがに俺も本人に面と向かって言いづらい。
小部屋を借りて支給服に腕を通す。
「良いじゃない!」
「そうか?」
部屋から出てきた俺を聖女が褒める。
ちなみに仮面は新調させてもらった。
何でも軍隊でも、お互いの顔を見られてはまずい時に使う仮面があるらしい。
口元は出てしまうタイプだがな。
見えている部分にひどい傷を作ってノゾかせておけばおけば、誰も仮面に文句は言えだろう。
高級そうな凝った模様が描かれてるのは余計だが……
そういえば、前に着けていた【草で編んだだけのお面】は【ヒモ状の蔓の下着】といっしょに支給服のポケットに丸めて放り込んである。
特に【ヒモ状の蔓の下着】の方は臭いがひどくてな。
苦情が出ないように持ち帰ることにした。
《鑑定スキル》の持ち主とかに、臭いから俺が怪人だとバレるリスク回避にもなるだろう。
聖女が迷宮調査の臨時パーティーのメンバーを募る。
やはりというべきか、クソ勇者は来なかった。
それでクソ勇者のお守りが必要になるらしく、勇者パーティーのオマケ雑魚2人の片割れ【全身鎧男】の方は村に残るという。
というワケで、臨時パーティーのメンバーは最初にも言ったがこうなった。
俺。
聖女。
イケメン斥候男。
そして、たまたまそこに居合わせたババア――老魔女。
『何もいうなよ』
『分かってる』
目配せだけで、老魔女と会話する。
さて、俺たちにこれからどんな運命が待ち構えているのだろうか。
うわー、隔週連載っぽくなってすみません!
くろねことら次はがんばゆ……_(┐「ε:)_