13.聖女の職質。
前回の出来事: 幼なじみをストーキングしているところを聖女に見つかった。
「あなたもこの森に漂っている【瘴気】が気になるのでしょう?」
「瘴気? どこから?」
「とぼけているの?」
「……いや」
「……本当?」
「……ああ」
「……この場所が、【瘴気の中心地点】なんですけど」
「……」
――な、俺から出てるのか……?
その、瘴気とやらが……。
聖女の目が意味ありげに俺を見つめる。
見つめ返すしかない俺。
緊迫した時が流れる――――
聖女が腰を降ろしたまま、ズズと顔を寄せてくる。
あっ。もしかしなくても、これは俺の正体バレたか。
俺、終わった――――
◆
「本当に何も感じていなかったのね。あきれたわ」
「済まない……」
深くタメ息をつく聖女に、申し訳ない感じを演じてみせる。
お。意外に俺、普通の人間のフリ上手くないか?
森に漂う強い瘴気に気づいた聖女が、1人様子を見に来てみれば怪しい男――つまり俺がいた。
それでてっきり自分と同じく森の異常に気づいていると思ったらしい。
ちなみに、聖女が言ってる【瘴気】について説明すると、森とか迷宮とかに発生する暗黒系の魔力? ――だったハズだ。
人間時に得た知識はほとんど失ったハズの俺だったが、瘴気についてはどうにか思い出した。
確か、濃すぎる瘴気からは魔物が生まれることがあるん……だっけか。
どうやらさっきまで俺がいた場所が、瘴気が湧き出る【中心地点】なのだそうだ。
かなり濃いモノらしく、俺が全く気づいてなかったと分かると「信じられない!?」とか「体は大丈夫!?」と心配されてしまった。
むしろ調子は良いと感じているんだが。
右腕にも力がみなぎる感じもあったしな。
そっか、これ瘴気のお陰だったんだな。
俺はあっち側の人間、いや怪人――
しかし……。
ふぅ。かなり焦ったぜ。
森の異常の原因が俺で、俺の正体が【怪人】だとバレたのかと思ったよ……。
危うく玉砕覚悟で聖女に攻撃するところだった――――
「それにしても丁度、瘴気の発生源の真上に座っているなんて。本当に具合は悪くなってないの?」
「ああ、大丈夫だ」
「だけどこんなに強烈な瘴気の真上で気づかないってあるかしら? 元冒険者なのに」
「冒険者といってもかなり下のランクだったからな……」
「なるほどね。でもあなただったら【元Sランク冒険者】だと言われても信じるけど。普通だったらこんな濃い瘴気の中に長時間いたら必ずといっていい程、どこかしらに出るもの」
「……」
「……はぁ」
しばらく俺をじっと見ていた聖女だったが、本当に呆れているといった様子で先ほどよりも大きなタメ息をついたのだった――――
◆
「この場所、調べてみないと確実なことは言えないけど【迷宮】の入り口が開こうとしてるんじゃないかしら」
「ん? 迷宮が何だって――」
「ちょっとそこ退いてみて。少し掘ってみる」
「おい、」
イヤな予感がした俺が止めようとした時には、地面が爆散していた。
「《聖拳》!!」
先週は(も)お休みをいただいてしまい申し訳ありませんでした――っッ
しかしこのお話、いったいどこに向かってるんや……





