12.瘴気。
前回の出来事: スライム男の廃棄処分は本当に決定していた。
上司の口から【処分の件】をハッキリ聞いてしまった俺は、足取りも覚束ないままアジトを後にする。
だがいったい俺はどこに向かえばいいのか。
上司――いや、創造主に。
親同然の存在に見捨てられたというのに。
こんな気持ちを味わうくらいなら谷底に落ちた時に死ねば良かった――
それから俺は何の目的もなく森を山をさ迷った。
何日間も。
そうして何日が過ぎただろうか。
俺は死に場所を探していた。
(谷……)
目の前に現れた谷に吸い寄せられるように近づいていく俺。
しかしなんか見覚えがある幅の無い谷だな――――
「この場所、この前落ちたトコロじゃねーか!」
無意識にアサナ村の近くまで戻っていた。
◆
ガサッガサガサ
コソッコソコソ……
俺はいったい何をしているんだろう。
自問する。
アサナ村を近くの森から見守る怪しい人物――いや怪人がいた。
顔には怪しい【草で編んだだけのお面】を着けている。
そして、体は裸の上から草とか蔓を巻き付けている。
はい、俺である。
前の仮面はどうしたって?
アレは谷底の川で失くしちまった。
人間の服もボロボロだったから魔女に言って処分してもらった。
一応、人間には変身済みだ
そんな俺がいったい何をしているのかというと――――
(あのクソ勇者の野郎――ッ)
俺の視線の先には村長の娘ライザ、そしてそのライザの周りをつきまとう黒髪の勇者がいた。
勇者パーティーがこの村にまだ留まっていると聞いて、イヤな予感がしたんだが、完全に予感的中である。
(あの様子ならライザはまだ無事……)
しかし、それもいつまで持つのか。
よりによってライザに目を付けるとは……。
いや、ライザの美しさからすればむしろ当然か。
「ははあ。勇者にあの娘が手篭めにされないか心配というワケね」
「!?」
なんといつの間にか人間の女に近寄られていた。
全く気づかなかった。
「また会ったわね【仮面男】」
「……」
聖女だった。
……念のため人間に化けておいてよかった。
あ、この人間の女、勝手に俺の横に腰を下ろしてきやがった……
「ヒドイお面ね。それにほとんど裸じゃない。前のはどうしたの?」
「……どうしてあの男はあんなに女に見境ないんだ?」
失礼な感想と面倒くさい質問を俺は無視する。
そして質問返し。
「勇者の女グセの悪さって有名なのかしら?」
「そりゃ皆知ってるだろう」
――たぶん。
「そうなのね……。あまりパーティー内のことを悪くいうのもよくないけどあなたには助けてもらったし、あの娘はあなたの大切な人の様だし……」
最後の方はゴニョゴニョと小さな声だったのでよく聞こえなかったが、そう前置きした後、聖女はポツリと言った。
「【攻略】……なんだって」
「なんだその【攻略】というのは?」
なんだ、といいつつもクソ勇者の心づもりは伺い知れた。
要するに「女を落とす遊び」をお楽しみなワケか。
敵であることを差し引いても、本当にムカつく大クソ野郎だ。
「聖女のアンタがあの男に言って止めさせるコトは出来ないのか?」
「ごめんなさい。もう何度も止めさせようとしたけどムリだったわ」
「ふぅん。もしかしてアンタも【攻略】された口なの……か……ウッ!?」
聖女の殺気の籠った眼光で、俺はようやく自分が命を落としかねない失言を口にしたことを覚った。
「……というか、あなたがこの場所にいる本当の目的は何かしら?」
この聖女、面倒くさい質問をスルーしたな。
もちろん俺はソレを追及するほど命知らずではないので大人しく質問返しに乗ってやる。
まあ、特に理由は無いというか、やること無いからライザを見ようというか。
「あなたもこの森に漂っている【瘴気】が気になるのでしょう?」
え、いや。
瘴気……漂っているのか?
先週は仕事・その他、リアルの影響で休んでしまい申し訳ありませんでしたっ・゜・(つД`)・゜・