11.処分。
前回の出来事: 自分が廃棄処分されるという噂を聞いてしまった。
ウソだろ……
生まれてこの方、俺ほど真面目に怪人していた怪人がいただろうか。
いやいない(断言)。
確かに今回は【アレ】だったかもしれないが、たった1度の失敗で廃棄処分とは、上司といえども横暴が過ぎるのではないか。
『スライム男は廃棄処分が決まったんだ』
蜘蛛女はそう言っていたが、上司に直接説明してもらわないと全然納得いかない――
だがよくよく考えてみたら、俺は今回仲間を、上司の命令を裏切ったことになるのか……?
いやそうだとしても、裏切ったことがバレる要素はなかったはずだ。
作戦の途中で姿を消して数日間戻ってこなかった、という失敗が問題になってるだけだろう。
そうであれば、きちんと(ウソの)説明をすれば許してもらえるに違いない。
そうでないと困る。
俺の居場所はここにしかないのだから。
◇
やっと見つけたアジトの入口から、スライムの特性を生かし気配を消してスルリと忍び込む。
上司の皆さんはどこにいる?
「……だからな」
「はい」
いた。
会議室の魔導モニターの前に上司が1人だけいるのを見つけた。
あの方は俺たち怪人の合成担当上司、つまり直属の上司であり直接の創造主ネフレ様だ。
超美人女性魔族ネフレ様、後ろ姿も実にお美しい。
モニターの向こうの魔族本国のお偉いさんさんと会議中のようだ。
ここは息を潜めてしばらく待つしかない……。
だがこの判断が、余計な情報を聞くことに繋がってしまった。
「【勇者】は【あの村】からまだ動かないのか?」
「はい、そのようです」
「何故だ。まさか何か感づかれたのでは……」
「理由はまだ判明してませんが、今までの勇者の行動と異なるのは確かです」
あのクソ勇者の話か。
……というかこれは俺が聞いてはいけない【軍事機密】の話ではないだろうか。
というか、もしかして【あの村】ってまさかアサナ村のことか?
アイツは何でアサナ村みたいな田舎村に長居してるんだ?
……なんだかとてもイヤな予感がする。
お偉いさんと上司とは別の意味で。
「怪人どもに近くの人間の村を攻撃させて勇者の反応を見よう」
「そのつもりです」
「急がせろ。このままだと【あの村】を襲わせた私の責任問題になってしまう」
「はい。ですので欠員が出た怪人の交代要員を急いでおります」
「例の【行方不明の怪人】か――」
ん? これは、もしかしなくても俺の話か?
「――その行方不明の怪人の話なのだが……」
「【スライム男】ですね。鋭意捜索中ですがまだ見つかっておりません」
「死んでるのなら良いのだがな。生きているとしたら確実かつ速やかに処分して欲しい」
「はい。見つけ次第、全怪人に仕込んでいる【自死機能】を起動して処分します」
なんだ……と?
俺の処分は本当にもう確定しているということなのか――
その上、ネフレ様の持つあのアヤシイ装置。
あのボタンを押したら俺は爆発とかして死んでしまう……?
【アポ……なんとかかんとか】が起動して…………?
ということは、もし今あのボタンを押されたら、実はすぐ近くに隠れている俺はオシマイなのでは。
すぐにここを離れないと。
「『備えあれば憂い無し』とはこのことか……。それから、交代要員の新しい怪人は決まったのか」
「はい、【コボルト男】といいまして――」
上司の口から「廃棄処分決定」の言葉をハッキリと聞いてしまった俺は、存在を消したまま、しかしふらつきながらアジトを後にしたのだった――――
この週末久々に旅行中です(相方サービス)。
人生初ハ◯◯テ◯◯ス!
この回は部屋に置いてあるウイスキーの小瓶(何故二千円以上する!?)の力を借りて、深夜ホテルのロビーで1人シコシコ書き上げました(///∇///)