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キャラメイクを始めよう

 ――――美少女にしてくれ!!


「 …………―― 」


 自分の願望に帰ってきたのは沈黙だった。

 まあ、わかる、突然自分を美少女にしてくれなどと言われたら困惑するものだ、それも望むものをなんでも与えようなどと言ったそばからだ。

 こういう場合は往々にしてすっごい能力や才能なんかを望むものだと相場が決まっているもの、実際ちょっとだけ考えたが、やはり自分は自分で考えた最強の美少女になりたいのだ。


 ゆえにもう一度


 ――――俺を俺の考えた美少女にしてくれ!


 ……要求に帰ってくるのはやはり沈黙であったが、なんだろう影法師がプルプル小刻みに震えている気がする、怒らせてしまったのだろうか、それとも――


 「 そ、そう何度も言わずとも聞こえている。

 君の考えた美少女……うん、問題はない 」


 影法師の声が震えているようだ、何でも言えって言ったのに文句がるならはっきり言ってほしいものだ。

 

「 失礼。すこし取り乱してしまったようだ、しかし問題はない。

 君を立派な美少女にしてあげるとも、大船に乗ったつもりでいるとよいよ 」


「 まずは準備を…… 」と言いながらふっと影法師が腕を振るえば、目の間に髪も顔も無いマネキンが現れた。

 

「 さあ、この人形が君のキャンパスだ、君の思い描いた通りに姿形を変えてくれる、存分に腕を振るいたまえよ 」


 つまり自分の中でいつも描いていた美少女をこのマネキンで再現しろということか。

 思えばいいだけならば簡単だ、なにせいつもしてることなのだからな、とりあえずまずはおおまかに


 ――肌はシミ一つないきめ細かい色白

 ――身長は少し高めに168cnくらい

 ――体重はまあ、平均ライン

 ――手足はスラっとしてて

 

 そうやってつらつらと理想像を挙げていけば目の前のマネキンはその通りの姿に変わっていく。

 次はもう少し体に特徴を付けていこう


 ――指は長くしなやかに

 ――お尻は小ぶりできゅっと

 ――胸は手のひらからちょっとこぼれるくらいの大きさで

 ――少し筋肉質で腹筋がうっすら割れている感じ


 ああ、すごいなどんどん理想に近づいていくぞ、この調子で顔も決めてしまおう。


 ――少し大きめの口に薄い唇

 ――下は長く、歯がギザっ歯

 ――すっと通った鼻筋に高めの鼻で小ぶりな小鼻

 ――薄目のきりっとした眉


 次は目だこれは大事だ、ここですべての顔の印象が決まると言っても過言じゃなあない


 ――切れ長の目に、二重の瞼

 ――長いまつ毛

 ――ネコ科のような縦長の瞳孔

 ――どんな宝石にも負けない黄金の瞳


 出来上がってきたマネキンを見て鼓動が高鳴ってきた、きっと今の自分はとても気持ち悪いにやにや顔でいることだろう。

 ともかく、最後の仕上げに髪の毛だ


 ――絹のようにサラサラで腰まで届く長さ

 ――毛量は多く、太陽すら霞む黄金色


 さあ、最後だこれが重要だぞ、何しろ自分の一番好きな髪型なんだからな


 ――それは立派な縦ロール(ドリル)!!


 最後に高らかに宣言すればマネキンの髪がシュルっとそれは見事な縦ロールになり完成を迎えた。


「 あー……口を挟んで申し訳ないのだが、本当によいのかね? 」


 どういう意味だろうか、自分は自分の理想の女の子を作り上げて大満足だというのに影法師はなにか不満でもあるのだろうか?


「 不満ではないが、君が作り上げたものに異論はないのだがね、これでは悪役のご令嬢ではないかと思ってね 」


 なるほど、確かに自分の描いたものはお世辞にも可憐な美少女ではない、むしろその可憐な女の子に嫌がらせなどを行い顰蹙を買う側の見た目であろう、だがそれでいいのだ、なにせ自分はいわゆる悪役令嬢と言われる者が大好きなのだから、当然、理想の女の子になると縦ロール(ドリル)を引っ提げた立派なご令嬢スタイルになるのは必然だろう。

 そもそも――――


「 あいわかった、その辺でいい君が令嬢物が好きなのはわかったから次に行こう、君の空想の中のお嬢様の見た目は出来た、次は中身を教えてくれたまえ 」


 中身か……、とその前に、服を着せていなかった、いくらマネキン人形とはいえ裸はよくない。

 洋服はそうだなぁ、全体的に赤い長袖ワンピース、スカートや袖口には黒のフリルで見た目の印象は簡素なドレスのような感じのものがよいな、下着は種類がよくわからないのでシンプルなものをドロワーズも忘れてはいけないな、靴は黒のレースアップニーハイブーツが好きだなぁ。

 小物などは向こうの世界で決めればよいだろ、よし、今度こそ完成だ。

 さて、中身となると性格のことだろうか……、そうだな、明朗快活で少々わがままなわんぱく少女、プライドが高く不撓不屈、まあ、世間で言う悪いお嬢様を少しマイルドにした感じだろうか。


「 よろしい、では最後に君が望む能力(ちから)はなにかな?ここまでイメージが固まっているんだ、君の空想の世界でも相応の能力(ちから)を持っているんだろう? 」


 そう言われても自分はこのお嬢様を主人公にいろんな妄想をしていたもので、思いついた話によって色々変えてきたから何がいいのかは特に思いつかない。

 行く世界が剣と魔法の世界なら、高めの魔力とそれなりの運動神経を持ってて剣術の心得があるっていうのが定番だったがこんなのは能力とは言わないだろから、うーむ……。


「 悩むくらいなら全部乗せというのもありだと思うがね、君が色々思案したものはすべて実現可能なものだ 」


 それだとただのチートになってしまうのではないか、自分は別に無双をしたいわけじゃないんだ、とはいえだ、確かに全部乗せも悪くないようは初めからとか苦労もなしに使えてしまうのがよくないわけでそれなりのプロセスを経た結果なら問題ないな、よし決めた全部乗せで行こう。

 なんのかんの言っても万能なのは憧れるものだ、差し当たって一つだけ初手にいわゆる魔眼が欲しい。

「 どんなものかな? 」という影法師の問に、視界の中のもの燃やしたり炎を操る魔眼だ、もちろん最初から十全に扱えなくていい。


「 よかろう、ではその眼をギフトにその他の能力(ちから)はどうするのかね?特にドラゴンなんかを召喚する魔導書はいかにするかな? 」


 「他にも魔剣とか」と言われ頭を捻る。

 そうだな、両親が元冒険者とかでその戦利品だとかでいけないだろうか。


「 名うての冒険者、となればそれなりに良いものを持っているだろう、問題はない 」


 影法師の了承も出たこれで転生の準備は整っただろうか。


「 ああ、これで最後だよ、名前を教えてくれないかな? 」


 確かに忘れていたな、名前か……。

 ――ジークリンデ、()()()()()()()()()()()()()()()

 なにか理由があるわけではないが、響きが気に入っているんだ、この名前で頼む。


「 よかろう、これですべての準備が整った、おめでとう新たな門出だ、君の人生に祝福があらん事を 」


 影法師の祝福の声と共に意識が遠のいていくのを感じる

 

「 次の人生も存分に楽しみたまえよ、そしてどうかその生で私を愉しませておくれ 」


 なんとも形容しがたい声に送り出されるように意識を手放した――

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