最終章・宇宙へ Ⅲ(最終回)
Ⅲ
ワープゲートに近づくミネルバ。
「付近に艦隊は見当たりません」
「ウィング大佐の流した偽情報に、まんまと引っかかったようですね」
レイチェル率いる情報部は、総督軍の統制コンピューターにハッカー攻撃を仕掛け、ランドール艦隊が接近中との偽情報を流したのである。厳重なセキュリティーに守られた軍のコンピューターがゆえに、まさか侵入されているとは毛ほども疑っていなかったのである。もちろん、闇の帝王とあだ名されるジュビロ・カービンが背後で動いていたことは、知る由もない。
「しかし情報一つで、敵艦隊を動かすことができるなんて、さすがウィング大佐です」
「感心してないで、行動に移しましょう。コントロールセンターのドッグベイに接舷してください」
ワープゲートは、ワープが行われるゲート部分と、ワープをコントロールする部分とで構成されている。
「突撃部隊は接舷ベイに集合してください」
ミネルバは、第八占領機甲部隊メビウス所属である。占領に携わる白兵戦用の精鋭部隊も揃っている。
「接舷しました」
「突入せよ!」
なだれ込むように白兵部隊が、コントロールセンターに突入した。
センターにいるのは、ほとんどが科学・技術職員なので、占拠が容易かった。
「コントロールを奪取しました」
突入部隊より連絡が入る。
「シャイニング基地へのワープゲートを繋いでください」
「了解しました」
というところで、タルシエンにいるフランク・ガードナー少将に連絡を取る。
「おお、待っていたよ。早かったな」
万事了解済みという風に答えるガードナー。
「トランターのワープゲートを奪取しました」
一応報告するフランソワ。
「判った。既にシャイニングに三個艦隊を待機させている。ゲートが繋がり次第、よっちへ転送する」
「お待ちしております」
通信が切れた。
「我々は、このワープゲートを死守します」
「偽情報に惑わされた防衛艦隊が引き返すのが早いか、シャイニングからの援軍がワープしてくるのが早いか。時間との競争ですね」
「それに地上からの追撃隊もあります」
言うが早いか、
「急速接近する艦があります」
オペレーターが警報を鳴らした。
「早速おいでなすったわね。総員戦闘配備!一旦ゲートから離間する」
敵味方を識別する必要はない。メビウスには宇宙へ上がれるのは、このミネルバだけだ。ゲートから離間するのは、接舷したままでは戦闘できないからだ。
戦艦プルートの艦橋。
「ワープゲートに到着しました」
正面スクリーンには、ワープゲートに接舷するミネルバがあった。
「遅かった。ゲートは敵の手に墜ちたようです」
「ミネルバが回頭して、艦首をこちら側に向けようとしています」
「原子レーザー砲を使うつもりだ。軸線上に入らないように気をつけろ」
原子レーザ砲は、大気圏内ではエネルギー減衰が激しいが、宇宙空間に出れば百パーセントの能力を引き出せる。ミネルバ級に搭載されていたのも、この宇宙に出ることを前提としていたからだ。
「破壊力も射程も桁違いだ。こちらは長距離ミサイルで応戦しろ!」
双方十分離れた距離からの戦闘ゆえに、相手に十分な損傷を与えることができない。
やがて、ワープゲートが反応した。
次々と艦艇が姿を現したのである。
ワープゲートから、次々と出現する艦艇。
「ウィンディーネを確認しました」
オペレーターが紅潮しながら報告する。
「続いてドリアード、フェニックスと続いています」
アレックス・ランドール配下の旧共和国同盟軍第八師団所属の精鋭艦隊が続々と登場しつつあった。
さらに第五師団所属、リデル・マーカー准将の第八艦隊以下、第十四艦隊、第二十一艦隊も勢揃いした。
アレックスの配下にあるアル・サフリエニ方面軍総勢六十万隻が勢揃いしたのである。
「ウィンディーネより入電」
「繋いでください」
正面スクリーンに、ゴードン・オニール准将が出る。
「よお、待たせたな」
「お久しぶりです」
「つもる話は沢山あるが、アレックスが苦戦しているだろうから、先に行くよ」
「判りました。お気をつけて」
総勢六十万隻に及ぶゴードン達の艦艇は、連邦遠征軍と交戦中のアレックス達の援軍として到着したのである。
速やかに現場に向かう必要があったので、フランソワとは話し合ってる暇などなかったのである。
「さて、我々は地上に戻りましょう」
宇宙戦艦ではないミネルバは、援軍に参加することは不可能であるし、まだ地上での作戦が残されている。
偽情報だと気づいた駐留艦隊が、取ってひき返してくれば、ミネルバ一隻では太刀打ちできない。
海底秘密基地に戻ってきたミネルバ。
レイチェルにワープゲート奪取作戦の報告をするフランソワ。
「お疲れ様でした。ミネルバの全員に四十八時間の休息を与えましょう」
「ありがとうございます。ですが、反攻作戦が始まったというのによろしいのですか?」
「大丈夫です。我々メビウスの新たなる作戦は、ランドール提督が連邦遠征軍を打ち負かして、その勢いでトランターへ進撃を開始、そしてトランター降下作戦が始まってからです」
「それで四十八時間ですか……」
「まあ、ゆっくりと養生してください。眠れなくなる前にね」
「はい。判りました」
フランソワは敬礼して、司令官室を後にした。
一旦ミネルバに戻って、乗員に四十八時間の休息を取るように指示した。
喜び勇んで、艦を降り始める乗員達。
基地には艦内にはない多種多様の施設がある。
食堂へ急ぐ者、レクレーション施設に向かう者、もちろん艦内の自分の部屋で寝る者もいた。
ミネルバを含むメビウス部隊の活躍は、まだまだこれからであるが、ひとまず物語を終えよう。
ミネルバの活躍は、銀河戦記/鳴動編の本編でお楽しみ下さい。
了




