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第六章・新造戦艦サーフェイス Ⅳ


 一方のサーフェイスの方でも、戦闘体勢が完了していた。

「超伝導磁気浮上システム正常に稼働中です」

「光学遮蔽に入るかも知れん、重力加速度探知手は見逃すなよ」

 超伝導磁気シールドは、電磁気を通さず光さえも遮蔽することもできるが、重力を遮蔽することはできない。

 惑星上で移動するには、重力に逆らって加速しなければならない。その加速度を計測するのが重力加速度計である。

「戦艦自体の戦闘能力は互角。後は将兵達の能力次第というわけだ」

「ミネルバの方は、士官学校出たての未熟兵が多いと聞きましたが」

「これまでにも幾度となく戦闘を重ねて、熟練度は向上しているはずだ。特にミネルバという特殊戦艦の運用については、あちらの方が一日の長がある」

「そうですね。ミネルバ級という点では、こちらはマニュアルすら精読してません」

「まもなく、敵艦を射程内に捕らえます」

「待機せよ」

「大気圏内戦闘だ。光学兵器は使用不能と考えてよい」

「ミサイル接近中!」

「来たか!面舵一杯でかわせ」

 艦体が大きく右に動いて、ミサイルを回避した。

 ミサイルは後方で炸裂した。

「無誘導ミサイルのようです」

「なるほど、誘導ミサイルだと磁気シールドで撹乱されるというわけか」

「こちらも無誘導ミサイルで応戦しましょう」


 ミサイルが交わされたのを確認するフランソワ。

「ミサイルの射程が遠すぎたようです」

「次弾装填は?」

「いえ、その余裕はありません」

 サーフェイスは目の前に迫り、長距離用のミサイルは使えない。

「まもなくすれ違いに入ります」

「面舵五度、敵艦の左舷に回る。砲雷撃戦用意!」

「面舵五度」

「砲雷撃戦用意!」

 副長が復唱しながらも、感心する。

「砲雷撃戦ですか……。まるで古代地球史にある大航海時代の海戦みたいですね」

 大航海時代の戦艦には、攻撃手段の艦砲が舷側に固定配置されており、戦闘は舷側を向かい合わせて互いに撃ち合うというものだった。

 電子兵器は無論ありもしないし、艦長の判断と砲兵長の経験が戦闘の采配を左右した。いかに有利な位置に船を誘導し、いかに大砲の弾を敵艦に届かせるかである。

 宇宙空間での戦闘における、ランドール戦法もこれに近いものだ。

「敵艦も我が艦の左舷方向に回りこむようです。敵もやる気のようですね」

「望むところだわ。戦闘要員以外は右舷に退避させて。ダメコン班出動準備!」

「了解。戦闘要員以外は右舷に退避せよ」

「ダメコン班出動準備!」

「第一主砲及び第三副砲に艦砲戦発令!砲塔を左舷旋回して待機」


 やがて、ミネルバとサーフェイスが、舷側を向かい合わせる配置についた。

 会戦の第二段階に突入したのである。

「敵艦、艦砲の射程内に入りました」

「撃て!」

 フランソワが戦闘の狼煙を上げた。

 当然、相手も撃ち返してくる。

 激烈なる戦闘が繰り広げられる。



「第十二ブロック第三発電室被弾、火災発生!」

「第十二ブロック、消化が間に合いません!」

「仕方がありません。ハロンガスで消化しましょう」

「第十二ブロック、総員退去して隔壁閉鎖!」

 ミネルバには、火災に対する対応法として、ハロンガス消化法が導入されていた。ハロメタン{トリフルオロヨードメタン}による消化で、一般・油・電気火災に対応できるが、人体に有害であるから、火災区画を閉鎖する必要があった。しかし、消化剤を使わないことから、鎮火後にはガスを排気すれば、すぐに点検なしで機器を使用できる利点がある。ハロンガスとしては、かつてはブロモトリフルオロメタンが使われていたが、オゾン層破壊が著しくて1000分の1といわれる、このガスに取って変わられた。

 特に発電室は、戦闘に不可欠重要な施設ゆえに、逸早く復旧が急がれるためにその処置が取られたのだろう。



 新型モビルスーツも善戦したが、さすがに歴戦の勇士であるリンゼー少佐の方が戦闘巧者であった。

 宇宙戦艦搭乗の際には、コテンパンにやられたが、今回は同型ミネルバ級機動戦艦同士である。司令官もだが、率いられる部下の乗員達も戦闘慣れしていた。

 士官学校出たばかりで未熟なミネルバとは格が違った。



 さすがのミネルバも、戦闘巧者のリンゼー少佐によって、大変なことになっていた。

 的確な砲撃が次々に飛来する。敵の砲撃手も熟練者のようである。

「被害甚大!修復もままなりません」

 艦内のあちらこちらで火災が発生していた。

 恒久応急班も手一杯であった。


 だがそれも、サーフェイス側の方も全く同様であった。

「致し方ない。今回は痛み分け、引き分けとしよう」

 リンゼー少佐は、後退の指示を出した。

 このままでは、双方とも取り返しのつかない損害を被るだけ。

 無駄な戦いは続けないという信条のようだった。


 そんな敵側の情勢を報告するオペレーター。

「敵が退きます」

「こちらも後退しましょう。これ以上戦うのは無理です」

「判りました」

 両艦とも背を向けて離れていく。

「応急修理ではとても、巡航速度が出せるまでには回復できません」

「基地に戻って修理するしかないですね。入港許可をとって下さい」

 海底秘密基地の存在を、敵に知られないように転戦してきたわけだが、ここに至っては基地に戻って、専門の造船技術者に頼るしかない。

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