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第四章・新型モビルスーツを奪回せよ Ⅶ


 バルモア基地の岸壁に強襲着陸したミネルバ。

 四方八方からの攻撃を受けているが、何とか善戦している。

 そこへモビルスーツ三機が走り込んでくる。発着デッキに飛び乗り、昇降機によって艦内へと格納された。

 カサンドラの訓練生達もキースの班に誘導されて次々と乗り込んでいる。

「モビルスーツ格納完了しました」

「訓練生の収容も完了しています」

「よろしい。ただちに浮上して下さい。すみやかに撤収します」

 急速浮上して山越えしていくミネルバ。野砲大隊を軽く潰して砂漠へと進入した。

「シャーリー・サブリナをここへ呼んでください」

 早速シャーリーが呼ばれる。

 フランソワの前に出て敬礼するシャーリー。

「報告を」

「はっ。今回の作戦任務において、旧式モビルスーツ二機と新型一機とを奪取に成功しました。しかしながらもう一機の新型は、奪取に成功したものの、パイロットが操作ミスをしたのか、システムが暴走したのか、はるか彼方へと飛んで行ってしまいました。この機体のパイロットは、実はカサンドラの訓練生です。本来乗り込む予定だったキャンベル伍長が撃たれ、起動ディスクを受け取った訓練生が代わりに乗り込んでしまったのです」

「なるほど、良く判りました。詳細報告書は後にして、下がって休みなさい」

「ありがとうございます。失礼します」

 再び敬礼して、踵を返して引き下がるシャーリー。

「新型モビルスーツの飛び去った軌跡を追跡できたか?」

「はい。追跡できております」

「発信機の方も、微かではありますが受信しております」

「よし! 新型は是が非でも回収せねばならない」


 その頃、アイク達の乗る新型モビルスーツは砂漠の真ん中に不時着し、岩にもたれかかるようにしていた。

 コクピットの中で膨れっ面のサリー。計器類を調査しているジャン。そしてアイクはというと、シートに深々と腰を沈め腕枕をして、ぼんやりと映像の消えたスクリーンを眺めている。

 電力消費を倹約するために、必要最低限の機器だけを作動させていた。

「なんで墜落したのよ」

「しようがないだろう。ガス欠なんだから」

「動けないなら、歩いて近くの町へ避難しましょうよ」

「ここは砂漠のど真ん中だぜ。一番近くの町でも何百キロとあるんだ。途中で干からびちゃうよ。それに至る所が流砂になっていて、踏み込んだら最期、あっという間に砂の中に沈んで窒息死だよ」

「寒いわ……」

「そうだな。外の気温は五度。夜明けには氷点下にまで下がるが、昼間になると今度は灼熱地獄変わるさ」

「ヒーター入れてよ」

「だめだよ。エンジンが動いていないんだ。すぐにバッテリーがなくなるよ。遭難信号を出す発信機のために電力を残しておかなくちゃ」

「……。ところでジャン。さっきから何をやってるの」

「こういう場合に備えて、大概サバイバルツールが装備されているはずなんだ。それがどこにあるか調べているんだ」

「弾丸だって一発も積んでいないんだぜ。サバイバルツールだって積んでないんじゃないか?」

「いや、サバイバルツールは常備品として、出荷時点で積むからあるはずだ」

「でも撃墜されて、脱出シュートで緊急脱出したら使えないんじゃない?」

「脱出?」

 見合わせるアイクとジャン。

「そうか! 座席だ。座席の下だ」

 座席を動かして下を探す二人。


「あったぞ!」

「こっちもだ」

 取り出したサバイバルツールには、次のようなものが収められていた。

 非常用携帯食糧、浄水器、拳銃と弾丸1ケース、コンパス、発炎筒、サバイバルナイフ、断熱シートなどなど。

「食糧は当然として、こんな砂漠で浄水器が役に立つかよ。ミネラルウォーターくらい入れとけよ」

「拳銃と弾丸は、獣を撃って食料にしろということだろうけど……。砂漠に獣がいるわきゃないだろが」

「いるのは毒蛇か昆虫くらだぜ」

「まあ、自殺するのには役立つけどな」

「やめてよ、まだ死にたくないわよ」

「ほれ、断熱シートにくるまってろ。寒さよけになる」

 熱を遮断する不織布製のシートで、くるまっていれば体温の放射を少なくして、温かく感じるというものである。

「うん」

 素直に答えて、断熱シートにくるまるサリー。

「我慢できなくなったら、ジャンと替わってもらうさ。どうせ今夜一晩だけの我慢だ。明日には救援がくるさ」

「この新型を奪取するために、機動戦艦ミネルバがやってきたり、特殊工作部隊を潜入させたりして、並々ならぬ戦力を投入している。新型を重要な戦略の一環として考えている証拠だよ。だから必ず回収にくるさ」

「だといいんだけど……」


 ミネルバ会議室。

 カサンドラから収容された訓練生達が集合している。

 前方の教壇に立って、訓示する教官役の二人。

「君達は、このミネルバに自ら進んで乗り込んできたわけだが、このミネルバにおいても引き続き、実戦に即した訓練を行う予定だ。成績優秀な者は順次実戦徴用する。しかし知っての通りに訓練機は一機もないし、君達パイロット候補生に搭乗してもらう実戦機は限られている。全員に対して十分な訓練を施すことができない。そこで適正試験を行って優秀な十名のみを選抜して、パイロット候補生とする。残りの者は、他の部門への配置換えを行う」

 ここで、訓練生達にプリント用紙が配られた。

 タイトルには、配属希望表と書かれ、パイロット以下被服班、給食班、衛生班、工作班、恒久処理ダメコン班、などの配属先名と、仕事の内容が書かれている。

 担当が入れ替わって説明を続ける。

「適正試験に合格する自信のない者は、パイロット以外の希望職種を記入して、明日午後三時までに総務部室へ提出するように。第一志望から第三志望まであるから、良く考えて記入するように。私からは以上だ」

 ここで女性士官に替わった。

「私は、皆さんの日常生活をお世話する担当です。何か相談事や心配事があったら、いつでも気軽に相談して下さい。配属された部署がどうしても合わないなどで、配置換えを希望する時も遠慮なく申してください。それでは、皆さんの宿坊を決めましょう。不公平のないように、くじ引きで決めます。男女別々ですからね。前に出てくじを引いてください。男子は青い箱、女子は赤い箱です」

 ぞろぞろと前に出て男女別々のくじ箱に手を差し入れて、くじを引いている訓練生。ワイワイガヤガヤとおしゃべりしながらなのは、まだまだ大人になりきれない子供だからだろう。実戦を知らず世間も知らない訓練生だった。

「くじに書かれた部屋番号は、後の壁に貼ってある艦内見取り図を見て、部屋の位置を確認して下さい」

 ここで一旦解散となり、各自の宿坊へと向かうように指示が出た。もちろん宿坊以外の場所への立ち入りは厳禁である。追って連絡があるまで宿坊から出ないようにとも。

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