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序章・トランターへ

序章 トランターへ


 発着ベイ。

 護送船団が次々と発進している中、指揮艦ニュートリアルのそばに立ち止まっているパトリシアとフランソワ。

「提督はあなたの才能を高く評価しています。そしてあなたならその期待に答えられるでしょう。わたしは信じています」

 ニュートリアルの艦長が降りて来る。

「大尉殿、まもなく出航の時間です。乗艦してください」

「すみません、今行きます」

 艦長に促されて、パトリシアに敬礼して最後の別れを伝えるフランソワ。

「それでは、行ってきます」

「しっかりね」

「はい」


 本星トランターへ向かう輸送船団。

 第八占領機甲部隊に、フリード・ケイスン中佐が開発生産した、最新型のモビールスーツなどの秘密兵器を届ける任務を帯びていた。

 その護衛に当たる護送船団の指揮艦ニュートリアル艦橋。

 指揮官席にどっかりと腰を降ろすフランソワ。

「護送船団の発進状況はどうですか」

「護送船団はすでに全艦発進完了して要塞周囲で待機中、本艦からの合図を待っております。本艦はすでに発進準備完了」

「よろしい。直ちに発進してください」

「了解」

「機関出力、出航モードへ」

「係留解除」

 係留解除と同時に艦体が僅かに軋んで揺れる。

「解除終了しました」

「機関出力最少。微速前進」

「微速前進します」

 ゆっくりと発進開始するニュートリアル。


 宇宙空間に出たところで、待機する護送船団の先頭に出るニュートリアル。

「全艦。艦隊リモコンコード、指揮艦ニュートリアルに同調」

 パネルスクリーンに投射される艦影マーカーの点滅が次々と点灯に切り替わっていくが、取り残されて点滅のままでいる艦があった。

「八番艦、どうした。リモコンコードが出ていないぞ」

 答えるようにその一艦が点灯に変わる。

「よし。全艦発進準備完了した」

「前方オールグリーン。航行に支障なし」

 要塞の方をちらと見て、一呼吸おいてから命令を下すフランソワ。

「船団を発進させてください」

「了解。全艦発進」

「機関出力、亜光速航行モードへ」

「ワープ航路の計算終了」

「ワープタイミングをリモコンコードに載せて全艦に発令」

「ワープ、五分前」



 要塞発着管制室。

 中央コントロールパネルスクリーンに映る艦影を見つめるパトリシア。

「護送船団、発進開始しました」

 やがて明滅していた護衛船団のマーカーがすっと消える。

「護送船団。艦隊リモコンコードでワープに突入。異常ありません」

「そう……」

 スクリーンの片隅に新たな艦影が現れた。

「第五艦隊第七部隊が、哨戒行動から戻ってきました」

「交替の部隊は?」

「第十一艦隊第十九部隊です。すでに発進配置についています」

「第七部隊から入港申請が出ています」

「先に発進を済ませましょう。第七部隊の収容はそれが完了してからです」

「了解」

「第七部隊はそのまま待機せよ」

「第十九部隊全艦発進」

 第十九部隊が発進をはじめる。

 てきぱきと指示を出すパトリシアに近づく女性士官があった。

「パトリシア・ウィンザー大佐ですね?」

「そうですけど……」

 相手を確認してその士官は踵を合わせて敬礼して申告した。

「マリア・スコーバ中尉です。フランソワ・クレール大尉の後任として、大佐の副官としての任務を命じられました。今後ともよろしくお願いします」

「そうでしたか、よろしく」

「ランドール提督がお呼びです」

「提督が?」

「はい。ここは私にまかせてください」

「では、後をお願い」

「かしこまりました」

 後の処理をまかせてその場を交代して立ち去るパトリシア。

 背後ではマリア・スコーバ中尉が、早速管制指揮を執り始めていた。

「マリア・スコーバ中尉である。これよりウィンザー大佐の替わりに指揮を執る。第十九部隊の出航状況を」

「現在七割がた、発進終了。出航完了まであと十五分」

「遅い! 極力急がせなさい」

 マリア・スコーバはフランソワとは正反対の正確で、積極的かつ行動的である。とはいえ、とにもかくにもマニュアル通りに事を進めようとするので、現場の状況を理解できずに時として他人とよく衝突を起こすことがあった。


「フランソワは一足早くトランターに出立しました」

「そうか。別れは辛いだろうが、これも本人のためだ。それにこの作戦において、機動戦艦ミネルバの艦長として、最適任者であることもね」

「可愛い子には旅をさせよ、ですか?」

「そうだね。いつまでも君のそばにいては、彼女の能力開発には妨げになる。後のことはレイチェルにまかせればいいだろう」

「ところで、マリア・スコーバを遣わしたのは、あなたですね」

「まあな。マニュアルに従って事を進めることは大切だが、それだけではないことを教えてやってくれないか。現場の状況判断というものも理解させなければ」

「わかりました」

「ところで、絶対防衛圏内に出現した連邦艦隊の動静はどうなっているか?」

「未だに動く気配を見せません。まるで、絶対防衛艦隊が総結集し進撃開始するのを待っているような感じにも見受けられます」

「待っているのかも知れないな」

「待っている?」

「何にせよ。トランターが陥落するのは時間の問題だ。トランターに向かったフランソワやレイチェルには苦労させることになる。遠き空の下、その活躍を祈ろうじゃないか」

「はい」


 序章・別れ 了

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