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第四章・新型モビルスーツを奪回せよ Ⅲ


 夕暮れとなり、電力ケーブル破壊工作に出ていた小隊が、無事に岩陰のテントに帰ってきた。

 副隊長が出迎えに出ていた。

「お帰りなさいませ。首尾はいかがでしたか?」

「うまくいったわ。作戦発動予定時刻に合わせて、無線起爆装置のスイッチを入れるだけだ」

「それは何よりです。敵基地の動きに変わりはありません」

「そうか……」

 テントの幕を、捲し上げて中に入る隊長。

「お待ちしていました。食事の用意は整っています」

 給仕班の兵士が待ち構えていた。

「よし、交代で食事にする。全員に伝えてくれ」

「判りました」

 副隊長がそばの兵士に目配せすると、納得したように指令の伝令に向かった。

「おい。例の二人をここへ連れて来い。食事を摂らせる」

「食事ですか?」

「捕虜にも食事をする権利はあるからな。捕虜の取り扱いに関する国際人権条約は遵守されるべきだ」


 やがてテントに連行されてくる訓練生の二人。

「やい。いい加減に解きやがれ!」

 後手に縛られた手を、さかんに動かしながら叫ぶアイク。

「ふふふ。口だけは達者だな。いいだろう、解いてやれ」

 と、食事をする手を休めて、部下に命ずる隊長。

「逃げられます」

「構わん。縛られていては食事は摂れんだろう」

「しかし……」

「大丈夫だ。少なくとも食事が終わるまでは逃げないさ」

 二人のおなかがクウと鳴っていた。

 食べ盛りの若者である、何はなくとも腹ごしらえ。湯気の立ち上る食事を前にして、逃げる気配は見せてはいなかった。

 引き下がる副隊長。

「まあ、座れや」

 自分の隣を指し示す隊長。

 言われた通りに、隊長の隣に腰を降ろす二人だった。

 プラスティック製の皿に盛られたシチューが手渡されると、早速口に運んだ。

「わたしの名は、シャーリー・サブリナだ。ご覧の通りに、この部隊の隊長をしている。おまえ達の名前を聞こうか」

 まず先に名乗ってから、二人に名前を尋ねるシャーリー。 

「俺の名は、アイク・パンドールだ」

「ジャン・サルバトール」

 食事を口元に運ぶ手を止めて、それぞれに名前を名乗る二人。

「いい名だ」

「それはどうも……」

 気の抜けたような声で答える二人。

 会話よりも食べることの方が大事だという感じだった。

「それだけでは足りなさそうだな。おかわりしてもいいぞ」

「そんじゃ、おかわり」

 と遠慮なく空になった皿を給仕係りに差し出す二人。

 二人はいつもおなかを空かせている食べ盛りなのである。

 やがて、おかわりの皿をもきれいに平らげて、地面に置いてから尋ねるアイク。

「あんたら反政府軍のものだろ? そうか……。判ったぞ、新型モビルスーツを取り戻しにきたんだな」

「そういうことにしておこう」

「なんだったら手伝おうか? 基地内のことには精通している俺達がいれば楽だぜ」

「その必要はない。情報ならこちらでも把握している」

 と言いながら、テント入り口に立つ兵士に目配せするシャーリー。

「おまえら、食事が済んだだろ。立つんだ」

 二人の前に立って促す兵士。

「また、木に縛り付けるのかよ」

「悪いがそうさせてもらう。作戦に支障が出ないようにな」

「冗談じゃねえよ!」

 と突然、兵士に体当たりし、外へ逃走しようとするアイク。ジャンも追従する。

 テントの幕を跳ね上げて外へ飛び出す二人。

 だが、外には屈強な兵士が待ち受けていた。

 簡単に首根っこをむんずと捕まれ、宙吊りにされてしまう二人。

「は、離しやがれ!」

 手足をばたばたとさせて、振りほどこうと暴れるが無駄な努力だった。

 体格差も筋力も、大人と子供ほどの違いがあった。

 シャーリーがテントから出てくる。

「どうした? もう捕まったのか、ぶざまだな」

「うるせえ!」

 プイと顔を背けるアイク。

「体育教練など無駄だとか抜かしておったが、その結果がこれだ。いざという時に一番発揮するのは体力だということがわかっただろう」

「ランドール提督だって、体育教練をサボっていたじゃないか」

 何とか言い返えそうとするアイクだが、

「提督の真似をしたということか……。で、おまえは戦術用兵士官か?」

 尋ねられて、言葉を詰まらせる。

「戦艦を指揮する者は、体力など必要がない。優秀な頭脳さえあればいいのだからな。比べられるものではないだろう」

 押し黙ってしまうアイク。

「頭を冷やして考えることだな」

 言い放すと、

「連れて行け!」

 二人を抱えている兵士に命ずるシャーリー。

「判りました」

 屈強な兵士は、二人が縛られていた大木へと連行していった。

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