余りモノかーい
田中でございます。
文化祭が近づいてきましたよ。
うちのクラス今年は、昔某テレビ番組でやっていたという、屋上からなにやら叫ぶイベントをするらしい。
もっとも、屋上は立ち入り禁止なので、体育館のステージでやるのだが。
今日から当日までエントリーを募集するのだが、人が少なかった時の為に、サクラ的にクラスからも何人か用意することになった。
叫ぶ内容は各自好きに決める。
私は当日のエントリー受付係になったので、特に準備もない。楽だ。
その日の昼休み、いつものように原ちゃんとゴンさんと話していた時だった。
因みに原ちゃんは背が低くて目がくりくりで、ものすごく可愛い。原ちゃんを狙っている男子は多い。
ゴンさんは平均的な身長で、ショートヘアのスポーティー女子。誰とでも友達になれる、すごい子だ。仲良し彼氏もいるので、大変うらやましいですな。
学校では大体、この3人でいることが多い。
で、昼休みに話は戻る。
私たちがいつものように話していると、クラスの目立つグループにいる、ややチャラい、誰にでも馴れ馴れしい山田が寄ってきた。
「俺さぁ、サクラでステージで何か叫ばなきゃいけなくなったんだよね~」
知ってるわ。
山田はおそらく、原ちゃんとゴンさんに話しかけている。
この3人グループだと、どう見ても私はオマケになるのだ。
なので、二人がうんうん相づちをうつ中、私は黙って会話を聞いていた。
「やっぱさ~、出るからには盛り上げたいじゃん?」
「そうだね!」
「何言うか決まったの?」
「まだちょっと悩み中なんだけどさぁ、」
「何か、隠し事叫ぶとか!」
「告白するとか?」
「えー、相手そこに来てないと出来ないじゃん!あれ、山田彼女いたっけ?」
「いや、今いないんだわ。」
「そうなの?いるかと思ってたー!」
「でさ、俺も告白盛り上がっていいかなって思ってたんだよ!」
「おぉー!いいじゃん、やんなよ!」
「え、ウソ、みたーい!」
「でしょー?だからさ、田中に告っていい?ムリーって叫び返してくれればいいからさ!」
「は?」
「だってさー、権田は彼氏持ちだし、原ちゃんはあれじゃーん。」
あぁ、山田の友達が原ちゃん好きなやつね。
「そしたら余ってるの田中だけでしょ?頼むわー!」
「......嫌なんですけど。」
「いやいや、本気じゃないからさ、余興だから!頼むね~。」
「田中、いいじゃん、盛り上がるよー!」
「あっちー(←私の事)手伝ってあげな~」
「......はい。」
原ちゃんとゴンさんにおされて、私はしぶしぶ引き受けた。
くそー、山田めぇ、余り者だとぉ?
事実なだけに反論できない!
いや、待てよ。このクラスの女子3人だけじゃないからな!
私以外にも余ってるからな、ちくしょー!
そして文化祭当日、山田の出番がきた。
「2年3組、川中雪乃さーん、好きです!俺と付き合ってくださーい!!」
「私も好きです!よろしくお願いします!」
「ガチ告白かーい!」
私は思わずつっこんでいた。
「すまん、たなかー!」
山田に私のつっこみが聞こえていたらしい。ステージ上から謝られた。
おい、これじゃあ何か私が振られてるみたいじゃないか。
「どんまい、田中。」
「元気だせよ、田中。」
ちくしょー山田め!