ラジオでショッピング
ーー秋晴れの心地よい昼下がり。
太郎は机の上に置かれたラジカセの電源を入れた。
常日頃から愛聴する地元のラジオ放送に周波数を合わせると、賑やかな音楽が流れ始める。
『みなさーん、こんにちはー! ――んっ? 元気が無いなぁ。もう一度、こんにちはー!』
太郎は子供番組でも始まるのかと、ボリュームはそのままにベットに寝転んだ。
『はい。それでは今週もラジオショッピングの始まりですよー!』
太郎は「なんだラジオショッピングか」と、思いながらも耳をラジオに傾けるのだった。
ラジオ『本日はちょっとスゴいですよ!
私、正直こんな良いものを、このお値段で紹介して良いのか今でも迷ってます。
本当は全部私が買い占めたいくらいの商品なんです!
みなさん、お電話の準備はよろしいですか?』
太郎「前置き長〜よ、はいはい、スマホは横にありますよっと」
ラジオ『今回ご紹介するのは――プテシロンシュナイザ産、高級掛け布団です!』
太郎「ーープテ、プテロシュ……どこ産だよ!? 聞いたことないわ! それって国? 地名?」
ラジオ『国産掛け布団の中でも最高峰と謳われるこの商品、生産が追いつかず在庫切れが続く中、このラジオをお聞きの皆様の為に10セット用意しました!』
太郎「――国産って、日本!? 日本にそんな所あるの!?」
ラジオ『インドゾウを贅沢に100%使用した、この掛け布団! その名も――ダッチEX!!』
太郎「インドゾウで国産!? インドゾウの何使ってるの!?
で、そのネーミング大丈夫なの!? 妻が複数あいだに入ってきたら、放送禁止どころか、垢BANだからね!」
ラジオ『この商品の特質すべき点は、なんといってもその保温性! 人肌のぬくもりが常時あなたを優しく包み込みます!』
太郎「いや、掛け布団の説明として正しいかもしれないけど、ダッチで人肌のぬくもりとか、いかがわしい想像しか出てこねぇーよ!」
ラジオ『赤ん坊のような肌触り、乳首のような柔らかさ、一度この布団で寝れば他の掛け布団で寝ようなんてとても思えません』
太郎「――乳首!? あんた今乳首っていったよね!? いや、それって柔らかいの!?
……アホかぁ! 思春期の中学生か! 自分で触っても分かるかぁ!」
ラジオ『本来、定価20万円のところを、当ラジオをお聞きになられた皆様への感謝の気持ちを込めて――1万円! 税込み1万円の大サービスです!』
太郎「定価高っ! しかも95%割引って在庫処分にも程があるだろーっ!」
ラジオ『さらに今から30分以内に注文して頂けると、もう1枚』
太郎「――さらに1枚!?」
ラジオ『国産高級羽毛布団がついてきます!』
太郎「ダッチEXじゃないんかぁーい‼︎
むしろ国産高級羽毛布団で1万円でいいだろ?」
ラジオ『それではお問い合わせの電話番号です。いいですか、お間違いの無いようにお願いしますよ! 090-……』
太郎「――携帯番号かよ!?
ま、まぁいい。ちょうど高級羽毛布団が欲しかったんだ……ダッチEXじゃない。高級羽毛布団だ。
えっと、090-……あ、あれっ?
なんで画面に『親父携帯』って表示されるんだ?」
トルルルルゥ……トルルルルゥ
親父『どうした太郎? 父さんちょっと仕事中なんだけど』
太郎「親父ーー‼︎
……ダッチEX1セット頼む」
親父『……毎度あり』
ありがとうございました。
皆さまの地元ラジオショッピングに幸あれ!




