町並みとギルド
その村は予想以上にデカイ場所だった。
この大きさは村というよりは町だろ。村?というか町全体が砦のようなもので囲まれている。円形の町なのか、だんだんと曲がっていっているのはわかるが、すごい遠くまで砦が見えてるからやっぱりデカイのだろう。高さも木の2倍はありそうだし。
「なあクリス、この村って本当に村なのか?町と間違ってないか?これ絶対町だよな」
「そうですね。フォレアは町ですよ。流石にこんなに大きい村はありませんよ」
クリスがそう言いながらふふっと笑う。
うん、かわいい。やばいわ。それより、やはり町だったか。ティナのやつ村とか言いやがってクリスに笑われちゃったじゃねえか。いや、かわいいからいいんだけど。
まあでもあいつを殴る理由がまた一つ出来たな。
「まぁ村でも町でもどっちでもいいとりあえず中に入ろうか」
「そうですね。ではとりあえず関所に行きましょう。何か身分証として使えるものは持ってますか?持ってなかったらお金がいるんですが」
ふむ、身分証。そんなものは持ってない。それにお金も持ってるわけがない。どうしよう。
「身分証もお金もないんですか?」
俺が固まっていると、クリスが心配そうに声を掛けてくれる。
ここはクリスにお金を借りるしかないか。女性に借りるなんて不本意だが仕方ない。絶対倍にして返そう。この言い方ダメなやつの言葉みたいだな。
「すまない、クリス。俺は今お金も何も持ってないんだ。もしよかったらお金貸してくれないか?」
「いいですよ。ていうか、持ってないのではとは思っていましたので」
「それはなんか恥ずかしいな。お金は絶対返すから」
「大丈夫ですよ。これはさっき助けていただいたお礼ということで、これで貸し借りなしということにしませんか?」
そういうことなら甘えさせてもらおう。お金は大事だからな。
「なら、ありがたくそうさせてもらうよ。じゃあ、関所に行こうか」
関所で身分証がないということを伝えると冒険者ギルドで登録するのが一番楽で、早く身分証を発行してもらえると教えてもらい、クリスにお金を払ってもらい中に入った。その時クリスも身分証を提示せずお金を払っていた。
フォレアの町はザ・異世界という感じだった。中世的な町並みで鎧を着た人、ローブを着た人、そして露店も結構出ていて賑やかだった。
こうしてみると、さっきの魔物に遭遇したのとは違う意味で異世界に来たって感じがして感動するよな。
でも、なんかこう違和感があるような気もするけど気のせいだろう。
よし、これから冒険者ギルドにレッツゴーだな。
「クリスは冒険者ギルドがどこにあるか知ってるか?」
「はい、この町には何回か来たことあるので分かります。でもその前に服屋に行ってもいいですか?さっきの一角熊との時にローブをダメにしてしまったので」
「もちろん、大丈夫だよ。じゃあ服屋に向かうか」
服屋はすぐ近くにあった。クリスと一緒に店に入り、クリスが服を買っている間、この世界の服がどんなのか物色する。
ふと、店に立て掛けてあった鏡を見つける。この世界、鏡なんてあるんだな。結構文明が発達しているのかもしれない。
そして、自分がどんな姿なのかまだ確認してないのを思い出し鏡で自分の姿を見る。
ふむ、違和感しかないな。なんていうか夏休みに調子乗って茶髪にした時に感じた違和感が全身にある感じだ。茶髪にヨーロッパ系の顔、身長は変わらない感じで年齢も多分変わらない程度だろう、前世ならかなりモテただろう容姿だ。この世界の感覚は分からんが、頑張れば初めての彼女が出来るかもしれない。
そんな風に感動しているとクリスが戻って来た。どうやらもう着替えているようでローブを着用していた。薄い青のローブでフードを被っている。正直とても似合っている。
「お待たせいたしました。シュンさん」
「いやいや全然待ってないよ。それよりそのローブ似合ってるね」
ちょっと緊張して上ずった声になってしまう。クリスの方も褒められた事に照れたのか、顔が赤くなっている気がする。気がするっていうのはフードで顔がしっかり見えないから仕方ないだろう。
「ありがとうございます」
照れてるのは間違いないようでさっきまでより声が小さくなっていた。
「よ、よしそれじゃあギルドに行こうか」
恥ずかしさから、話をかえたのは仕方なかったと思う。前世ではこんな風に女性を褒めたことなどなくてやばかったのだ。
服屋を出て町の中心に向かって歩いていく。服屋に入る前はすれ違う人がチラチラ見たりしていたのだが今はそれもなくなっていた。クリスがフードを被ったからだろう。
歩くこと5分ほどで、周りの建物よりデカイ建物が見えてくる。どうやらあれが冒険者ギルドのようだ。
俺とクリスはその中へ入っていく。入った瞬間視線がこちらに集中した気がするが、それもすぐなくなり喧騒に包まれる。
とりあえずギルドの受付に向かう。
「冒険者登録をしたいのですがここで出来ますか?」
ギルドの受付にいたお姉さんに声をかける。
「冒険者登録ですね。かしこまりました。すぐに用意するので少々お待ちください。お連れ様もご一緒に登録ですか?」
「はい、お願いします」
それからお姉さんは奥に入っていく。
そして、1分もしないくらいで戻って来た。
「こちら、登録用紙となりますので、ご記入お願いします。出身などは分からない場合は書かなくても大丈夫です」
書かなければいけないのは名前、出身、年齢、種族だけのようだ。出身は国とか知らないので書かなくていいのは正直助かるな。
名前と年齢と種族を埋めて提出する。
文字を書けるか不安だったのだが頭の中で自然と浮かんできたので問題なくいけたというか文字を自然と読めていたのだから当たり前だな。こういうところはティナの恩恵様様だな。
そして用紙を確認され、クリスの種族の欄を見てエルフと呟いたが、すぐにギルド規定のルールなどが教えられ、冒険者カードが渡された。
規定は、犯罪を犯すと冒険者カードを剥奪されるなどといったものだった。そして、冒険者カードは無くさないようにということだ。なくすと再発行にお金がかかるらしい。
冒険者カードはクエストの受注、完了の際に必要で、完了の際にカードに記録され、一定のクエストをこなすと昇級するらしい。
昇級というのは冒険者ランクというのがあり、Fランク〜Sランクとなっている。上位のランクになるほどクエストが難しくなっていくらしい。Sランクの人族は神戯大戦の出場をかけたトーナメントの出場資格が得られるらしい。
ちなみに登録したばかりなので俺とクリスはFランクである。とっととSランクになり、出場資格を得たいものだ。
「Fランクからすぐ高ランクになる試験とかっていうのはないんですか?」
はやくSランクになりたいのでダメ元で聞いてみる。
すると、俺たちの話を聞いていた冒険者たちから笑いが起きる。
「おい坊主、お前みたいなヒョロそうな奴が何を言ってるんだ。そんなに自信があるのなら俺がお前を試してやろうか?」
俺たちの近くにいた厳ついおっさんがなんか喧嘩を売ってくる。
「やめておいた方がいいですよ。彼はAランクのチームの冒険者です」
こそっとギルドのお姉さんに教えられる。
Aランクということは結構強いのだろう。この世界の人の強さがどんなものか知るためにも、買うのもいいかもしれない。
「お姉さん、それで昇級する方法はあるんですか?」
「一応Bランクまでなら一気に上がる方法はあるんですがギルドとしてもあまりオススメはしません」
「なら、こいつに勝ったらそのクエスト受けさせてくれ」
昇級の条件を知るためにここで実力を示すのはいいだろう。一角熊は突然だったので逃げたが、こいつは人だしいけるだろう。
「ほう、大した自信だな坊主。なら、この隣に広場があるからそこで戦うとしようか」
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もう少しの間1日1投稿していこうと思っています。お願いします。