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挿話 記憶の欠片 花

今回は二話投稿しています。



 早駆けを緩めた男が、ふと気にかかった。知っているひとのような。好ましいような。

 髪は薄い色をしているが、光に当たると輝くだろう。

 それが気に入ってか、皆が見ている。

 男は、気がつかない。

 おもむろに馬首を横へ向け、慣れた様子で小高い丘を登り、向こうを一望できるところへと出た。

 空が暗くなってから、あっという間のような、随分と経ったような。

 今日は星明かりのみの夜。

 それでも、草原は冴え冴えと青く、輝いている。

 男が見る方向には、ひとがたくさん暮らす町がある。ひとは夜に眠るという。町もすでに眠っているのだろう。町のぐるり外塀とその中の高いところにある大きな四角い建物の周りにだけは、火が焚かれ、闇夜に浮かびあがっている。

 けれどその明かりは頼りなく、町の周りの草原は、沼のように暗い。


「伯、どうされました」


 もうひとり寄ってきたひとが、男に声をかけ、そのあと町の方を眺めて、ふんふんとワケ知り顔に頷いていた。


「今夜は、町の宿にご宿泊とか。……よろしいのですか、ほんの数時間なりと、お顔を見て行かず」

「……問題ない」

「やれ、新妻に、冷淡なことで」


 男は冗談に応じもしなければ、いささかも動じない。

 しなやかな身のこなしで馬首を翻し、いくぞ、とばかりに再び駆け出した。

 

「あ、ちょ、お待ちを」


 慌てたように、もうひとりが騒々しく駆け去って。

 また、草原は静かになった。



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