食事にご出席してしまった。
投稿少し間が空いてしまいました。
すみませんm(_ _)m
今回は少し長めとなっています。
時は進んで、食事会の刻。
父様と王様のお話は随分前に終わっていたらしく、少し待たせてしまったらしい。
2人とも笑って許してはくれたが、私の持ち帰った本の山には目を丸くしていた。
気に入ったので裏庭で読み耽っていたことと勝手に拝借した事を謝ると怒るどころか快く貸出を許可してくれた。
いつでも本を読みに来ていいと王様は言ったが父様はあまり私をここに来させたくないようだった。
「娘になにを吹き込むかわかったもんじゃない」だそうです。
私は会場の座席に着くと、物珍し気に周りを見渡した。
そこには私達以外にも貴族や王族の方々が数名参加していた。
そこには見知った顔も。
「エレノア?」
「あ、リチャード様!さっきぶりですね。」
「だね〜君もお客様だったんだね!また会えて嬉しいよ。」
「私もです!先程は本当にありがとうございました!もうほんとっとうに素敵なお庭でまるで緑の王国みたいで読書が捗るのなんの!!って1冊すでに読破してしまいました!」
「あっはは、喜んでもらえて何よりだよ。弟のリオネルも裏庭にいること思い出して大丈夫だったかちょっと心配だったんだ。」
あーうん。
まあ、結果から言うとー大丈夫ってわけじゃ、なかったけどね…
でもさ、一介のちび娘にこんな気を使っていただいて、お宅の弟さんのせいで死ぬとこでしたなんてさ、とてもとても言えませんよ…。
本当に弟と違って、人が出来ていて丁寧で、しかもこんなに綺麗なお顔してて…話してるだけで心が浄化するー!!
「弟さんは食事会にご参加になっていないのですか?」
「うん、リオネルはこういう会合みたいなの嫌いなんだよ。よく知りもしないやつらにヘラヘラニコニコしてられるか、自分は忙しいんだって。」
よし、ここであいつに会うことはなさそうだ。
まったく、兄に対して偉そうなのも子供の時から変わってないのか。
「そうなんですか。美味しい料理が食べられて楽しいですのにね。」
いつもはどうかは知らないが、今回は食事がバイキング形式のほぼ立食パーティーに近いフランクな食事会で子供でも気軽に楽しめる。
食べ物ブースには常に腕利きのコックが着いて客が好きなものを取ったり、注文してその場でコックに作らせる仕様だ。
だから…あっちで肉の焼ける芳ばしい香りが漂い、そっちでは新鮮な魚がその締まった身を照明に照らされ、こっちでは焼きたてのパンの焼ける音が…
グギュルルルゥゥゥ
「も、もう耐えられませんわ…」
「お腹すいたね〜。もう少し待って、父さんが開会の乾杯の合図を出すまではお預けだから。」
「うぅ、生き殺しですわぁぁ〜」
「頑張れ〜!」
お腹が空きすぎて今にもテーブルクロスを食べてしまいそうな私をリチャードは笑いながら宥めた。
くっそう、早く終われ!!
「………それでは、乾杯!!!!」
「「「「乾杯!!!!」」」」
やった!!終わった!!
私は嬉々爛々とした目でリチャードの方へ視線を送った。
リチャードは優しく微笑んで「行っておいで」と促してくれた。
ありがとう…!!私は小声でそう答えて一目散に食べ物ブースへ向かった。
もちろん狙うのは大振り肉厚ステーキ!!
私は誰より先にお肉ブースにへばりつくと、コックさんに大きなステーキを頼んだ。
コックさんはよく食べるのはいいことだ、とニカッと笑うとお肉を分厚く切って焼いてくれた。
「お肉の焼ける音といい香りといい、なんて美味しそうなのぉ…」
私はただひたすらに肉の焼ける様をうっとり眺めていた。
はぁ…ずっと眺めてられる。
「今度はちびの子豚になるつもりか??」
…あ?
なんとなく、聞き覚えのある声。
いやーまさか。ないない。
ゆっくりと私は振り返る。
見覚えのある銀髪。仁王立ち。青い目がしっかりとこちらを捉える。
あっははーおもしろーい
私は、お肉と再び向き合う。
「あーお肉早く焼けないかなー」
「おい無視すんな。」
「コックさん、ソースいーっぱいかけてくださ〜い」
「お前聞こえてるだろ。」
はあ、面倒くさい…。
私はできる限り迷惑な顔を作って見せた。
「…何ですか。」
「本当は来ないつもりだったが、俺がわざわざ出向いてやったんだ。もう少し感激しろ。」
……………ニコッ
「それはそれはどうも、私大事な用がありますので。ではごきげんよう。」
「お肉ミディアムレアとかにできますかー?」
「大事な用なんてないだろ!!」
ブチッ
「もう、うるさいんで黙ってください!!!お肉がまずくなるでしょおがああっっっ!!!!」
後日その様子を見ていたリチャードは腹を空かせた魔獣にそっくりだったと供述していたとのこと。
「んふっ♪おーいしい〜!!!!」
「ふふっ、口にソースが付いてるよ。本当に美味しそうに食べるなあ。」
リチャードは自分のナプキンで口を拭ってくれた。
「ありがとう!!ってあ、ありがとうございます…だった。」
「別にいいよ、無理して敬語使わなくても。僕達あんまり年も変わらないんだし。リチャードって呼んでくれていいから。」
リチャードはやはりいつもの優しいキラキラスマイル。
ああ、これから先何人の女性がこのスマイルに心奪われていくのだろう…。
「なんで俺らと対等に話させる必要があるんだ?こいつすぐに調子乗るからやめとくべきだと俺は思うがな。」
「よろしくお願いします、リチャード!!さすがに王子様相手だから敬語はまだ出ちゃうけどこれから頑張ります!!」
私は精一杯、リチャードに負けないくらいの笑顔で応えた。
「ふ、ふん!勝手にしろ!!」
なぜかリオネルはへそを曲げてそっぽを向いてしまった。
やっぱりゲームと癖まで変わってないや。
ファンの中で通称、へそ曲がり病とかツンデレ病とか素直になれない!!どうしよう><病などと呼ばれるリオネルの癖。
要は気に入らないことがあるとすぐ拗ねるのだ。
ゲームではある程度好感度が高い状態で他の男(攻略対象外含む)と会話をするだけで心を閉ざすとかいうメンヘラシステムのせいでどれだけ攻略に苦労したことか。
正直、つくづく面倒臭い。
しかし、リチャードの前でもある。
ここは大人になろう。
「リオネル」
「っ!!」
「って呼んでいいでしょうか?」
ここだけは、可愛い女の子になりきろう。
主人公ちゃんになりきれ!!
大丈夫、父様におねだりしてると思えば。
「わ、私リオネルと仲良く出来たらすごく…嬉しいです。駄目…ですか?」
上目遣い、そしてさりげなく腕を触る、ワントーン高めの声。
これぞエレノア流、男の人に断らせない王道テクぞ!!
これでちょっとは、心を開いて…
「な、なんだよ。触るな!」
余計にそっぽを向いてしまった。
あれ、おかしいな…
父様だったら1発KOでなんでも言うこと聞いてくれるんだけどなあ。
「リオネル、エレノアはお客様なんだから少しはもてなしてあげてもいいんじゃないか?」
「うっせ、兄貴」
リチャードにも取り付く島なし、か。
兄に対するこのでかい態度。
…お気持ちお察しするよリチャード。
仕方ない、ほっとこ。
「リチャード、デザートを一緒に取りに行きませんか?」
「もちろん、いいよ」
弟に素っ気なくあしらわれて少し凹んでいたリチャードだったが私の提案には快く応じてくれた。
「ふん、食いしん坊め」
「なんとでもお呼びください。行きましょう、リチャード」
私はリチャードの手を掴んで、デザートコーナーに促した。
「お、おい…ま、待て」
「なんですの?」
「ちょうど今、たまたま偶然菓子が食べたくなった。お前は生意気だが俺と仲良くなるいいチャンスをやる、喜べ。適当に美味い菓子を選んで俺に持ってこい。」
なんだこいつ。
皆にこうなのか?
まあ、ゲーム内でも横暴さと面倒くささは折り紙つきだったが。
齢7歳にしてパシリか…。
でも、食べてる時くらいは大人しくなるかな。
「言い方が気に入りませんが、謹んでお受けしますわ。」
そういえば、リオネルの固有ルートでこんな場面見た気が…。
たしか、小さい女の子…。
うーん、やっぱり固有ルートの内容まで鮮明には思い出せないな。
私はひとつまみの引っかかりを胸にしまい、お菓子を選ぶことにした。