思い出してしまった。
私は、いわゆる陰キャのいじめられっ子でした。
貧乏な家庭でろくに風呂にも入れず、皆が持っているものも買ってもらえず、大人しくて容姿も大して良くなかったために周りから嫌がらせを受け、抵抗することもできなかった。
私は小中高と陰気な自分のままでいつも隅に居続け、自分を変えられない弱い奴のままその生涯を終えることとなった。
皮肉にも、自分に自信が持てないからと頭を上げずに歩いていた私を居眠りの大型トラックは全速力で轢き殺して行った。
死ぬ寸前、走馬燈が見えるだとか一瞬の時がスローモーションに感じるだとかいう人がいるがまさか自分が本当にその瞬間の当事者になることがあるとは思わなかった。
しかし、ふざけたことに私の脳裏によぎるのはいじめられていた悲惨な過去ばかり…走馬燈ってもっと美しいものだと思っていたけれどこんなものを死ぬ前に見るくらいならもっといい思い出を作りたかった。
ああ、こんな悔しい気持ちで死ぬのか。
人生の最後、道路の真ん中に横たわって全身の感覚が無くなっていくのを感じながら見る久しぶりの青空は涙が出るほど綺麗だった。
―――――とここまで思い出したのは私が7歳の子供のころだった。
鮮明にはっきりとした記憶、夢でも幻覚でもない、私の前世の記憶だった。
それを思い出したのは、丁度7歳の誕生日。
私は自分の誕生会で急に眩暈を起こし、気を失って、それから次の日の夜中に目を覚ました。
そして私は見た目は7歳、中身は高校生のどこぞの名探偵のような状況になってしまった訳である。