雨上がりの路地で
掲載日:2018/03/09
激しい雨が深夜から、住居の屋根に打ち付けていた。こんなときに、好き好んで外に出る人はあまりいない。
朝になるにつれて、徐々に雨が弱くなり次第に屋根に溜まっていた大粒の水滴が、人には聞こえない音を出しながら、地面に向かって流れ落ちて行く。
「おはよう、漸く静かになったね」
早朝、玄関の引き戸を開けるとすぐに、真正面の見知った住人との会話が始まる。
「おはようございます。そうですね、まるで滝のように激しく打ち付けていましたね」
なんてことのないやり取り。雨が上がると、所狭しに隣り合う住居の路地は、声と音と、動きのリズムが一斉に聞こえ出す。
雨に降られていた時と、雨上がりの時とはいつもと変わらぬ路地であっても、風景も光景も一変するような、そんな不思議な空間が出来上がる。
雨を好む人は、そうしたいつもと変わらぬ色の移り変わりを、心待ちにしているのかもしれない。
雲間からのぞかせる朝陽の日差しも、雨がもたらす恩恵なのかもしれない。雨は嫌だ。そう思いつつも、変化に乏しい路地の色を変えてくれるなら、私は喜んで望む。
雨上がりは特別をもたらしてくれるものだから、たまには雨も歓迎するよ、と。




