さようなら、ヒロヤ・カナエ
錬が一度話を止めるまでにかなりの時間を要した。
リアは聞き入り錬は必死に身振り手振りも使い説明をしているのだ。
話が一度止まった原因は簡単だった。
近場に倒れていたヒロヤだ。
ヒロヤがいきなり立ち上がり発狂したのだ。
どのように発狂したかと言うと、
「うぉぉぉぉぉ、俺の魔法は成功したのか、おぉぉぉぉぉぉぉ、成功してるぅぅぅぅぅぅぅ」
このような感じで発狂を始めたのだ。
さらに、この状況は起き上がった瞬間から始まったのだ。
二人は何も言えず、黙りこくってしまったのだ。
ヒロヤが発狂をし始めてから三十分近くが経とうとしていた。
今だ二人は何も出来ずヒロヤを眺める事しか出来ていなかった。
二人が騒然としていると一人の女性がやってきた。
カナエだ。
「あぁ、やられてしまっているね。」
「どういうことですか。」
「そこのお嬢さんを助けるために使った魔法をいつもより強力にしたのよ。」
「そんなことが出来るんですか。」
「愚問ね。私の夫よ、当たり前じゃない。こう見えても根性が凄いんだから。」
カナエは笑いながら発狂を続けるヒロヤを見る。
相変わらず意味の分からない事を叫んでいるが大丈夫なのだろうか、こっちが心配になるレベルだ。
「本当に大丈夫ですか。」
「多分ね。こんなにも精神を削られている状態を見たことがないから分からないけど。」
「ハハハ。」
錬はカナエの返答に空笑いをしてしまった。
「まぁ、後は任せて頂戴。」
カナエはそう言うと別れの言葉を何も告げることなく錬とリアは宿に向かった。
錬の中ではヒロヤたちに嘘をつき続けた事に心が苦しいが、一方では感謝しきれないほどの感謝の気持ちに頭が上がらないと思っている。




