解呪
四人がスヤスヤと睡眠をとっている間、ヒロヤは焦りながら術式を組み解いていた。
複雑に絡み合った糸のようにほどけず四苦八苦していた。
「クソ、どんな強力な魔法を使ったらこうなるんだ。」
頭をむしり掻きながら思考錯誤する。
なかなか解読できず苛立ちが書くせない。
明日の十時までにこの呪いに匹敵するレベルの魔法を解除するのはかなり困難な事だ。
だが、愛娘を救ってくれた男のためだやるしかない。
ヒロヤは一度台所へ行き顔を洗う。
眠気が覚め、落ちてきそうだった瞼もしっかりと上がりやる気を出す。
もう一度寝台に寝かしてあるリアの元へ行く。
手をリアにかざす。
魔法陣が現れそこを真剣な眼差しでヒロヤは見る。
だが、先ほどとあまり変わらず何も分からない。
何も分からないわけではないのだが、入り乱れすぎて簡単であろう場所も複雑に見えてしまっているのだ。
「しょうがない、一度試してみるか。」
ヒロヤは数歩後ろにさがり詠唱を始める。
「我が身に宿りし、光の欠片、其れは我が唯一の命の煌きなり
森羅万象、幾億の命、幾億の運命、幾億に広がるは無限の宇宙
全てを統べる鍵にして、扉を開く者、そこに在るは光にして闇なり
大地を照らすは太陽、闇夜を灯すは月
命の産みの親にして、生ける者の母、其れは慈愛に満ちたる穢れなき優しさに満ちる光の海
海底に響き、奏でる優しき音色、黄金の鈴を鳴らせ
大いなる蒼き空、全てを覆いて、竪琴を奏でん
止まらぬ時よ、止めることを許さない、過ぎ行くは光の矢
無限に続く終わりなき螺旋、永久に続く光を遮る深淵の闇よ
時に束縛されし、硝子の檻に閉ざされる砂、其れは終えては還る
迷宮に在る真実の道は一つにして、二つは在らず、行き着くはただ一つの扉
我はそなたを解放すべし者、鍵解呪」
ヒロヤは体内にある魔力それにかなりの精神を削り解呪の魔法を唱えた。
ヒロヤが唱えたのは、この世界にある有数のオリジナル魔法だ。
ヒロヤが作り出した最高傑作であり、幾多もの呪いを解いてきた。
これで解けなければもうなすすべはないだろう。
だがこの魔法は一切の考慮もせず力尽くで解く魔法なので、もしかしたらまだ何か発動するかもしれない。
今までは無理ありでもどうにかなってきたが今回は分からない。
そう思い、ヒロヤが状況を見ようと一歩前に歩くとヒロヤの目に前には床があった。
自らが思っていた以上にこの呪文に力を使っているようだった。
いつもより、力を入れていたせいかもしれない。
そう思いながらヒロヤの瞼は静かに閉じられていく。




