新たな街に向けて
錬たちはフェリアから出ている。
パーティーも一段落し、ヒロヤたちは悲しそうな顔をしている。
「ユキ、本当に行くんだな。」
「ユキちゃん、寂しくなったらいつでも帰ってきていいのよ。」
「もちろん、心配してくれてありがとう。パパ、ママ。」
ヒロヤとカナエは偽ユキの体を借りているフィーネを囲む。
二人は偽ユキの頭を撫で涙を流している。
フィーネもうっすらと涙を流している。
「錬、ユキを頼んだよ。」
「任せてください。ヒロヤさんたちの娘さんを危険な目には合わせませんから。」
「絶対よ、約束してね。」
「カナエ、錬なら絶対に大丈夫だよ。」
「錬から私離れないから安全だよ。」
何か少し大根芝居っぽくなってしまったが、まぁいいだろう。
フィーネも気づいていないようだし。
錬はヒロヤたちに頷き宿に向かう。
明日にはこの街ケテレスから出て行こうと考えている。
ヒロヤたちにこれ以上迷惑を掛けたくない一心だ。
さらに、これ以上関わっているとボロを出してしまうかもしれないからだ。
なので、今日中にリアを目覚ましてもらわなければならない。
ここからは、知るしとぞ知る治癒魔導士のヒロヤの腕の見せ所だ。
そんな事を考え、特に話すことなく宿にたどり着く。
「ガルディナ、少し話がある。ちょっと来てくれ。」
「あぁ、良いぜ。」
二人はフィーネを宿の玄関に待たせておく。
「ガルディナ、宿に入ったらメリアと同じ部屋に止まってくれ。でもその前にリアをヒロヤたちのもとにコッソリ連れて行ってくれ。」
「おう、任された。」
「バレるなよ。フィーネが見つけた時に何をするか分からないからな。」
「分かってるよ。」
しっかりと考えを共有しておく。
それから三人は宿に入り休息をとる。
何事もなく四人で夕食を食べ睡眠をとった。
夕食前にガルディナが遅れてきたことをフィーネは怒っていたが、まぁ大丈夫だろう。
錬とフィーネ、ガルディナとメリアというコンビの部屋で就寝したが特に何も言われることなく、夜の静けさに身をゆだねた。




