新たなる日常
メアリヤの店で働き始めて早一ヵ月もたった。
「錬、かなり仕事を覚えてきたね。」
「メアリヤさんの指導のたまものですよ。」
錬がふざけてボケるとメアリヤから軽く頭を叩かれる。
「ふざけるんじゃないよ。」
「イッテ」
叩かれたところをさすっているとメアリヤが優しく微笑む。
この街に一ヵ月いてこの街がかなり冒険者の行き来が多く冒険者にとって重要だということが分かった。
さらにメアリヤは本当に指導がうまく、メキメキと錬の仕事効率が上がっていってる事が自分でも分かる。
始めに話術が得意だと言ったことを真意に受け止め少しつづだが冒険者の売却の交渉をやらせてもらっている。
「すいません、ワーバットの羽買ってもらっていいですか。」
「少々お待ちください。」
錬が対応しメアリヤのもとに行き、客が来たことを伝える。
「冒険者さんが来ましたよ、どうしますか。」
自分が行くのかメアリヤが行くのかを聞くと、当たり前だろと言わんばかりに背中を押される。
「さっさと行きな。」
「はい。」
錬は、冒険者のもとに駆けて行く。
(僕もかなり仕事が板についてきたかな)
『錬、分かっていて聞くのは無粋ですよ。メアリヤのおかげでかなり仕事ができるようになっていることを実感してるんでしょう。』
(まぁ、そうなんだけどね。)
フィーネと話しながら対応するための準備を整える。
「ワーバットの羽ですね。二百五十リオになります。」
「おいおい、冗談はよしてくれよ。この大きさをしっかり見てくれよ。」
もちろん、分かって安めの値段を提示したのだ。
「分かりました、三百五十リオでいいですよね。」
「いいや、この大きさなら五百リオはかたいだろ。」
「それは盛りすぎですよ。三百七十でどうでしょう。」
錬は冒険者の目を鋭い目で見つめる。
錬にはもう分かっているのだ相手の最終的に収まりたい値段を。
だが、それではダメだ。
なぜなら、ワーバットの羽は特に使い道が無いからだ。
「分かった。四百五十リオで手を打とう。これ以上下げれないからな。」
「何を言っているんですか。ワーバットに羽じゃそこまでもいきませんよ。三百九十リオだ。」
もう、何を言っても無駄だと言わんばかりの表情と声のトーンで伝える。
それを感じ取ったのか冒険者も無駄だと感じ取る。
「分かったよ三百九十でいいよ。」
悔しそうなおもむきで冒険者はバナックシェリーから出て行く。
「相変わらず、ギリギリの交渉をするね。」
「メアリヤさんへの恩返しですよ。何者かも分からない僕を保護した上に生きるための仕事を与えて下さったんだから。」
「それを言うならリアに言ってやりな。保護したのはリアなんだからね。」
「いいや、レシケナトス家皆さんのおかげですよ。」
「そうかい、そう言ってもらえると嬉しいよ。」
客が来ないことを残念に思いながらも錬は感謝を伝えられ嬉しく思う。
こうして、慣れ始めた新たな日常が今日も終わろうとしている。
疲れたなぁ、でもなんだか気持ちいい疲れだなぁ。
錬はベットに横たわり瞳を閉じる。
どれだけ経ったか分からないがかなりの熱さに錬は、目覚める。
(これは、いったいどうなっているんだ。)
焦った錬は、メラメラと燃え火の粉を上げる家から飛び出す。