火属性魔法の実験
錬は魔導書入門を片手に持ち書いてある呪文を詠唱する。
「灼熱の焔たる炎よ、我が手に集いて来たれ、炎の精霊と契約を結びし者なり、炎の加護を受けたまわん」
短い詠唱を唱えると、右手に小さな灯が生まれる。
そして、徐々に大きくなり、腕などに広がっていく。
さらに、胸や頭、下半身などに炎が広がっていく。
錬の体が炎で包まれる。
特に熱さは感じられない。
だが錬が触ったものは灰と化す。
「これでも本領じゃないのか。」
首を傾げなげながら近くにあるものを無作為に触る。
この見た目を黒フードたちには見られるわけには行けないのでさらに後ろに下がる。
パチパチと音をたてながら炎が燃えているので気が気じゃない。
かなりの音を出しているように自分では聞こえる。
長時間使うと精神が蝕まれるので一度この状態を解く。
特にユキの時は考えなかったが一応は意識しておく。
錬がガルディナの元に戻ると黒フードたちの祈りがほとんど終わっていることに気づく。
なぜなら、見た目が紫色に発光しているからだ。
さらに、紫色に発光している時に最終段階だという事に気づいたわけは簡単だ。
作戦の書を見つけ出し錬は見ていたのだ。
大体することは分かっていたのだがどんな術式を使うのか知らなかった。
さらに、細かいことまでは把握しきれていなかったので探す必要があったのだ。
術式は全部で七つあったのだが、こんなにも早く七つ目に行っているとは思いもしなかった。
炎が自身の体に広がるのに時間が掛かったとはいえ、まさか二時間程度で七つ目に行くなんて。
「どうする。」
「どうしようにもないだろう。」
二人は何もすることなく見ている。
「偽りの体でいけるのかな。」
「知らねぇよ。」
刻々と時間が過ぎ黒フードたちの発光が消えた。
そして、何かを叫ぶと偽ユキの体が光りだした。




