館への侵入
ユキを助けると覚悟を決めたヒロヤはかなり古びた大きな館に足を踏み入れた。
【ギー】
古びた音をたてる玄関の扉を開き中を覗き込むと薄暗くあまりよく見えない。
「誰かいませんか~」
大声でヒロヤが叫ぶが自らの叫び声がこだまのように響きわたるだけだった。
何一つ返事が返ってこない。
するとヒロヤは屈みこみもう片方の作ったものを地面に置く。
「いったんここに置いておくか。」
ヒロヤは丁寧に置くと立ち上がり起動している方のゴーレムに近づく。
そして、一度術式を解き違う術式を組む。
「これでよし。」
自動で進む術式から自らを追尾する術式へと切り替えたのだった。
ヒロヤはどこに大量のリオを置けばいいのか分からずとにかく片っ端から扉を開けて行く。
ほとんどの部屋が開かないのだが、時折開く部屋は整頓されており見入ってしまうほどだ。
それからというもの何部屋もあけ続けたヒロヤがドアノブを回し扉を開けようとすると、聞き覚えのある声が部屋からもれてくる。
「錬、それで本当に行けるのか。」
「きっと大丈夫だ。あの人は自分があった中で一番の魔導士だからな。」
「それならいいんだけどよ。まさか錬が・・・・・・されているなんてな。」
「仕方がないだろ。緊急時だったからしょうがなかったんだ。」
「でも、錬らしくない解決法だな。」
「・・・には迷惑は二度もかけたくなかった。それに、こんなにも早くこうなるとは思っていなかったから。」
そんな会話をヒロヤは聞くと扉を開けるのをやめ、こことは違う場所に歩き出した。
「おい、まさかな。」
ぶつぶつとヒロヤは呟きながら錬とガルディナのいる部屋から遠のく。
後ろでゴーレムが嫌な音をたてたが、気にせずヒロヤは行く当てもないまま館を歩き続けた。




