各々のユキへの気持ち
錬がいなくなった宿で三人は無言が続いていた。
だが、ヒロヤがゆっくりと口を開く。
「カナエ、君の気持ちはすごく嬉しかった。俺たち二人の気持ちは良かった。でも、ユキの気持ちは考えてあげて欲しかった。」
「ごめんなさい、こんな私があなたみたいなお金持ちの人と結婚して、周りから玉の輿に乗れてよかったねと言われて心に来ていたの。だからこそ・・・・」
「ごめん、気づいてあげられなかった。」
二人はうつむき、また黙りこくってしまった。
「二人共、今は過去を振り返っている場合じゃない。ユキの救出方法を考えないといかんじゃろ。」
「そうですね、マジュロウさん。」
カナエはもちろん、ヒロヤも祖父のマジュロウの意見に賛成の意しかなかった。
「ユキはどうして誘拐されたか知っているのか。」
ヒロヤの質問に対して紙を拾ったカナエは口を開ける。
カナエは錬が走って出て行った後すぐに涙を拭き店から飛び出した。
そこで、ユキの姿を見つけ駆け寄ろうとするが横から黒いフードを被った三人が取り囲んでおり、カナエが警戒して術式を組みだした瞬間にユキを何かの布で纏わりつかせると、ユキを含め四人が消えてしまった。
さらにその地面には紙切れが一枚落ちていた。
その事を二人に告げるとかなり顔を引きつった。
ユキをさらった相手はかなりの強者だという事が理解できた。
そして、その瞬間に駆け出した錬の安否が気になりだした。
ユキと錬、二人が生きて帰って来れるかは、今から準備を始めているヒロヤとカナエにかかっている。
マジュロウは歳のため行くことを断念しざる負えなかった。
久しぶりに戦闘モードに入るヒロヤは目が白く光りだした。
一方錬は宿屋に着くと丁度昼飯を食べているガルディナとメアリに出会った。
戦闘が出来ない錬にとっては好都合だった。
ティオだけを連れて行くつもりだったのだがこれでガルディナにも来てもらえれば戦闘に役立つだろう。
メリアは危険な目に合わせることが出来ないので適当な言い訳をして置いて行くことは必須だろう。
ガルディナが食べ終わるのを待ちながら一度部屋に戻り、一冊の本をつかみ食堂にまた戻る。
すると、ガルディナは丁度食べ終わっており、メリアに聞こえないように耳元でガルディナに囁く。
すぐに事情が伝わりそのための準備をしてくれた。
そして、ガルディナとティオを連れ出し宿から飛び出した。




