ユキ・・・・
「カナエさん、あなたがやっていたことは分かりました、それにその理由も。でも、やっぱり今はユキの気持ちを考えてあげるべきだったんじゃないんですか。」
「でも、あなただってこれに興味を持って聞いてきたじゃない。」
「でも、まず返ってきた時に謝るなりなんなりと、して挙げた方がよかったともいますよ。」
そう言い放つと錬は扉から勢いよく出て行った少女の背中を追うように出て行った。
カナエは娘の気持ちを何も考えていなかったことを悔やみその場で崩れ両手で顔を覆っていた。
「ごめんね、ユキ・・・・」
声にならない声を上げながらカナエは一筋の涙を流した。
「お~い、ユキ~。どこにいるんだ。」
錬は名前を呼びながらユキが行きそうな場所を巡っていた。
この街に来て、一ヵ月近くが経とうとするのでかなりの地理がある。
だがもともと住んでいるユキは早々見つからない。
「すいません、僕の胸辺りの身長の白髪で紅眼の少女見かけませんでしたか。」
「見てないわね~。」
「そうですか、ありがとうございます。」
たまにすれ違う人に問うのだが見ていない人しかいなかった。
ユキの事を知っている人に会い、聞くのだがやはり見ていないようだ。
やみくもに探し続けて三十分以上経つのだが誰一人としてみていないらしく見つからない。
仕方がなく一度店に戻ることにした錬は悔しそうに下唇を噛みしめ走って帰る。
その間も名前を叫びながら叫ぶのだがうんともすんとも返ってこないかった。
そして店に着くと何やら不穏な空気を感じた。
「どうしたんですか。」
店の中にいた三人に問う。
錬の声に反応しこちらを向き何も言わずに一枚の紙を差し出して来る。
【娘は頂いた、返してほしければ明日、朝日が昇りきる前に一千万リオを持って、街外れの館に来い。】
そう殴り書きのように書かれている文字を見ると錬は体の力が抜けて行った。
「うそ、だろ。」
錬はヒロヤたちを見るが悲しそうな表情を浮かべ首を横に振った。
カナエは声も上げずにシクシクと泣いる。
おじいさんは、うつむき、絶望を感じているかのような表情をしていた。
錬は手に持っていた紙を投げ捨て宿に向かって走り出した。




