昼の部スタート
「いらっしゃいませ。お席は空いている所へ自由にどうぞ。」
錬はお客さんがいつもより女性が多いがうろたえることなくしっかりと対応をする。
やはり酒場の時と違い女性客や子供連れなど初めてできたところには興味を持つだろう。
酒場で少しきづらい人でも昼間に開ければいかつい冒険者たちがいない時なら来やすいだろう。
この店は見ずらい所にあるが一度見れば中が気になるだろう。
見た目の割には内装はおしゃれなので驚く。
「こっちの三セット、お願いします。」
「ただいま。」
錬がすぐに奥にいるユキに伝えると運んでくれる。
満席とは言わないがなかなか席が埋まってくれて上々な始まりでかなり嬉しい。
ユキもそう感じているのか少し頬が上がっている。
「ユキ残りどれくらい。」
「五セット。」
「二十五組分作ったけど、もう少し多くても良かったな。」
「でも、私がパンケーキ作る量が多くなるから大変だな。」
「何か月か経てば、何人かバイトとして雇えるようになるさ。」
「そうだといいね。」
そんなことを話していると周囲が食べ終わりそうな雰囲気を出してきていたのでユキがパンケーキを焼きだした。
錬は邪魔をしないように食べ終わっている器を集めつつ洗いに入る。
ユキが時折焼き終わったと言ってくるのですぐに運びに行く。
かなりパンケーキは好評なのかかなりのスピードで食べ終わる客ばかりだ。
特に家族連れの人たちは子供が親にせがる程だ。
そうの光景を見てユキは遠くを見るような目になってしまう。
錬は目をそらし距離を離れる。
器を回収して回り洗うことに専念をする。
次のお客が来るが錬ではなくユキが対応してくれている。
ユキがパンケーキを焼くたびに悲しそうな顔をするので錬は心が痛くなる。
やはり、ユキの母は・・・
そんな事を思いながら器を集め洗う作業を繰り返すのだが、そこまで多くを用意していないのですぐに仕事が終わってしまう。
ユキを見るとお客の前では生き生きとしているのでその状態を見ると安心する。
そして扉を見て残り一セットを誰が食べるのか、入ってくる客を見ていると盛大に扉が開く。
「久しぶり、愛しのユキちゃん。」




