新たな経営場所
少ししかいるつもりのなかった酒場だがなかなか出させてもらえずずっと女の子とおじいさんに挟まれながら軽く酒をすする。
もし飲んでしまい酔っ払ってしまったらもともこもないからだ。
「ユキちゃん、お店大丈夫なの。他にもお客さんいるのに。」
「大丈夫、呼ばれたらすぐ行くから。」
天真爛漫な少女は爽やかに微笑むと錬にリオを使わせようとしてくる。
だが、その隣ではまたかなり出来上がっているおじさんがいる。
錬が少しでも飲みだすのを見ると「自分も」と言わんばかりにユキに頼み飲みだしたが数分後、一瓶飲み終えおじさんはかなりべろんべろんに酔っていた。
「あの~、そろそろ帰らせてもらいたいんですが。」
「そんなこと言わないでよ。ドンドン飲んでいいんだよ。感謝の気持ち。」
ユキはそう言ってくるのだが、そこまで酒が好きではない錬は断り続ける。
一刻も早くあの店に行きたいのだがユキが話してくれない。
錬はあまりしたくはなかったがユキに向かって嫌な顔をした。
そのことにユキも気づきうつむく。
「ごめんなさい、引きとめすぎましたね。」
ユキは笑いながらとても悲しそうな顔をする。
「いいよ。そこまで怒ってないから。じゃあ。」
「ちょっと待ってください。250リオです。」
「え、」
錬は固まる、感謝の気持ちでタダかと思っていたのに金を取るのか。
「タダじゃないの。」
「いいえ、違いますよ。感謝の気持ちは一緒に飲んであげる事です。」
そう言えばユキも隣でジュースを飲んでいた。
うまくはめられたようだ。
「払うけどさ。こういうのはよくないと思うよ。」
「すいません、だけどお店の経営が危なくて。」
今までより一層悲しそうな顔をしてユキはうつむいてしまった。
「どのくらい危ないの。」
「かなり、街の長からの徴税を待ってもらっている状態なんです。」
「それはかなりだね。」
「はい」
消えそうな声でユキは返事をする。
「僕も出来ることがあればしてあげたいんだけど、仲間の治癒で来たからなんともね。」
「どこの店で頼んだんですか。」
興味があるのか食いついてくる。
「まだ頼んでないんだけど、裏路地にあるお店が第一候補かな。」
「本当ですか、ありがとうございます。」
「え、どうして感謝されるの。」
「あの店はお父さんとおじいちゃんのお店なんです。」
自信満々にユキは胸を張る。
そしていきなり疑問をぶつけてくる。
「かなり高いですよ。お父さんかなり優秀だから値段がかなり高いんです。」
「本当に。」
「本当です。」
錬はうな垂れる。
まさかの展開だ。
薄汚く裏路地にあるのだから安いもんだと思っていた。
錬が悩んでいると、
「じゃあこうしましょう。この店の経営が黒字になれば無料でお父さんの治癒受けさて上げますよ。」
「本当に、無料で。」
「もちろん、話をつけておきますよ。」
ユキの言葉に歓喜する錬だが明らかに損していることに気づかないのであった。




