封筒の差出人
錬たちは恐る恐る寺があった場所の奥深くへと踏み込んでいた。
それなのだが、封筒を残していった怪しい雰囲気の人がいない。
ましてや、三屋の姿も一切見つけることが出来なかった。
「どうなっているのでしょうか。」
「わしには分からんが思いついたことは一つある。」
「何ですか。」
「もしかしたら、この一帯にはまだ寺の何かが残っている。」
「どうして、そう思うんですか。」
「勘としか言いようがないのだが、何か感じるのじゃ。」
ジェグは自分の言った言葉に頭を悩ませウンウンとうなっている。
「でも、それは正しいと思いますよ。」
その状況を見かねた錬はジェグをフォローする。
「どうしてだ。」
「だって、あなたはあの寺の影響を受けていた一人です。だから、何か通ずるものがあるんですよ。」
「そうかのぉ~」
「きっとそうですよ。だって、ジェグさんの体の一部のようにあったんですから。」
「それも、そうじゃな。」
二人は何かといい関係を築きながら奥へ奥へと歩いた。
すると、男の断末魔のような物が耳に入った。
二人は声が聞こえたであろう方向へ走ると、そこにはデュマリオが倒れている三屋の上にまたがっていた。
二人は本能的に茂みに身を隠した。
「はぁ~、君じゃないんだよ。前にも言ったよね。あ、覚えてないか。ハハハ」
「何の事言ってやがる。」
「あら、本当に覚えてないんだ。やっぱり君じゃだめだ。」
三屋が必死に抵抗しているのだが空しくもデュマリオはすべてをかわした。
その光景に錬は何も言葉が出なかった。
あんなにも強い三屋が商人であるはずの男にボコボコにされているからだ。
「どう・・・して」
錬は潜めていたはずの体を起こし、二人に近づいて行く。
「おい、三屋何してるんだよ。」
「はっ、雑魚は黙ってろ。」
「ハハハ、君面白いね。雑魚は君だよ。」
そう言って、倒れている三屋の体を持ち上げデュマリオは吹っ飛ばした。
「これで邪魔者はいなくなったね。どうせ君の事だ、ジェグを連れてきたのだろう。」
デュマリオは薄笑いしながら錬に近づいてくる。
「おい、止まれ。」
デュマリオの後方から三屋が血まみれの体を起こし、薄笑いを浮かべている男に怒鳴りつけた。
「はぁ、君はもう飽きたよ。」
そう言いながらデュマリオはクルリと回転し三屋の方を向いた。
「これで最後だ。」
そう言って、デュマリオは三屋に飛び掛かった。