仲間思いの男
寺に向かって走っている二人は静かだった。
会話をすることなく黙って走っていた。
はんば無理やり連れてきたのだから仕方がない。
錬は前だけを向け走り続けた。
横を見ようものならジェグを目が合ってしまうからだ。
寺まで距離がもう少しになったときジェグが口を開いた。
「錬さん、あなたがそんなにも悩んでいるのであれば教えましょう。三屋に何を言われたのか。」
錬はジェグの言葉に食いつき、前のめりになる。
立ち止まり聞く態勢に入った。
「本当ですか。ぜひとも教えて下さい。」
錬の気迫にジェグはおののく。
「落ち着いてください。言いますから。」
ジェグの言葉に錬は自分を落ち着かせる。
「ゴホゴホ、ン、ウッンン。では言いますね。」
そう言ってジェグから告げられた言葉に錬は言葉を失った。
まさか、あんなにも自己中のあの男が仲間の事を思っていて驚いたのだ。
そう、三屋がジェグに言ったこととは、
『俺は、バカだから力でしか解決できない。だから、終わるまで待っていてください。』
そう言って、ジェグを拘束したらしいのだ。
錬は三屋を裏切者だと思っていたことが恥ずかしくなった。
だが、一方で気持ちの切り替えにもなった。
「この先にも、三屋がいます。協力して、倒してやりましょう。」
「そうだな。」
錬の言葉にジェグが微笑んだように見えたが、錬は興奮状態にあり気が付かなかった。