封筒
三人は重い足取りで寝ている二人がいる部屋へ向かう。
特に話すこともなく下を向き歩いていた。
(クソ、クソ、クソ・・・)
錬は自分の使えなさに悔やんでいた。
この世界で商人をしていて現世で学生をしていた自分に何かできるかと言えば何も出来ないのだが、それがさらに悔しかった。
大切な仲間を奪われ、何も出来ない状態だった。
その事が錬にとってとても悲し事だったのだ。
錬がそんな事を考えているともうすぐそこに部屋の扉があった。
錬は扉を開け中を見ると三屋がいなかった。
「三屋はどこに行ったんだ。」
錬がフィーネに問うとけだるそうに、
「用事が出来たから出掛けてくるだって。」
この状況でどこかに行ってしまった三屋に錬は碇を覚えた。
「どこに行ったか知らない。」
「ん~、知らない。」
「そうか。ありがとう。」
感情のこもっていない声で錬はフィーネに礼を言い、椅子に腰かけた。
他の二人も椅子に座り未だに暗い表情をしていた。
錬は天井を見上げ暗くなってしまった気持ちにケリをつけようとした。
そして、一分経ったか経たなかったくらいで前を向き、四人に話しかけようとすると、見慣れないものが目に飛び込んでくる。
入ったときには気づかなかったがそこには一通に封筒が落ちていた。
錬はすぐさま立ち上がり中を確認すると、
『今夜丑三つ時に寺のあった場所へジェグを連れて来い。』
と書かれていた。
錬は四人を心配させないようにこの封筒にポケットに押し込んだ。
今は十二時になる直前なのでまだ時間はある。
そして、錬は四人に平然と嘘をついた。
「僕お腹痛いからちょっとトイレ行ってくる。何かあってもここにいてね。」
そう言って錬は何食わぬ顔で部屋を後にした。
そして、すぐにジェグの店へと走り出した。
その瞬間に封筒を落としたのだが錬は全く気付かなかった。