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話し出す女
女を見た錬は気を失ってしまった。
「大丈夫ですか~」
女の声は一切錬の耳に届かなかった。
「お兄さん、起きて下さい。」
子供たちに体をさすられ錬は目を覚ます。
「すまない、何が起こったんだ。」
「後ろの白いお姉さん見て倒れちゃったの。」
「そうだったのか。」
そう言って錬は立ち上がり後ろを振り向くと、うつむいた女がいた。
「何なんですか。」
錬が切れ気味に女に問うと、もぞもぞとして何も答えてくれない。
「おい、何か答えろよ。」
錬が声を荒げて問うが何も答えようとしない。
「おい。」
錬が女の肩に触れようとすると、すり抜けた。
幽霊なのだから当たり前なのだが、錬は驚いた。
「お、おぉ」
「ウフフ。」
錬がそんな事をしていると、子供たちが錬の袖を引っ張る。
「そんなことしてないで早く行こうよ。」
「ちょっと待て。おい、お前何か用があるんじゃないのか。」
「ありますよ~」
女は薄気味悪く笑いながら錬の問いに遂に答えた。
「早く教えろ。」
「その前に、言うことがあるんですよ~」
話すたびに笑う女を気味悪く思いながらも錬は話を聞くことにした。