暇な店
錬たちはジェグが来ないまま昼まで働いていた。
客も特に多くは来ずに暇な時間を持て余していた。
「錬兄ちゃん、この店酷くない。」
「そう言うな、この店は立地も悪ければ周りからも知られていない。」
「だから来ないの、お客さん。」
「・・・まぁ、そうだね。」
錬はその通りなので何も言えず頷いてしまった。
自分の店ではないが、今この店の主任のような立場にいるので少しは心にくる。
「メリアの嬢ちゃん、そんなに錬をいじめてやるなよ。」
「そうですね。」
メリアもガルディナもニヤつきながら錬を見る。
錬はため息をつきながら適当な場所に座る。
外の風景を眺めていると見たことのある男に似た人を見つけた。
サングラスをつけた男が腕を組みながら壁にもたれていた。
特に客もいなかったため錬は下ろしたばかりの腰を上げ、その男に近づいて行く。
「どうしたんですか。」
「俺にはかまうな。」
そう言って、男はどこかに立ち去ってしまった。
錬は何も言えず立ち去るのを見たままだった。
すぐに店に戻ると珍しくお客が来ていた。
「何にしますか。」
ガルディナが元気よく対応しているが客は一向に言葉を返してこない。
「ガルディナ、黙っておけ。」
「錬、でもお客さんだぞ。いいものを買って欲しいじゃないか。」
「買うものは自分で決めるもんだぞ。」
錬がガルディナにそう言うとお客が頷いているのが視界の隅に見えたが何も触れなかった。
「じゃあ俺たちは何するんだよ。」
「質問されたら対応して、購入の時に清算するくらいだ。」
錬がそう言うとガルディナはしょうもなさそうに、店の中をうろつきだした。
数分後に数個のアイテムを持ち、買っていった。
その日はその客以降全く来なかった。