デュマリオの店
錬はテキパキとデュマリオの指示に従う。
始めは今までとは違う店の雰囲気に戸惑っていたが、一時間も経てばほとんど慣れていた。
それに、今までは制服といった概念は無かったため少しむずがゆかったりもする。
しかし、そんな事に構っていられないのは当たり前なのでデュマリオは錬を顎で使った。
「他の魔石持ってこい。」
デュマリオに言われて倉庫から魔石の入った箱を持ってくる。
「どうでしょうか、お客様。」
デュマリオはすぐに客の方向を向き対応をする。
その姿は普段とは明らかに違う。
いつもは不愛想なのに対し、お客にはどうしたら買わせることが出来るのか、分かっているように感じる。
なぜなら、今日魔石を買いに来たお客さんは今の所全員が一つ以上は買って帰っている。
この店で働き始めて三時間近く経とうとしているが未だに不思議だ。
なぜ、そろいもそろって皆が皆買って帰るのか。
この店の商品は決して安くはない。
どちらかと言えば高い方だろう。
魔石の定価などは分からないが高いもので、丸が六個ついている。
安くても丸が四個ついているのだ。
まぁ、それはショーウィンドーの中に入っているものだが。
外に少し置いてあるが1000リオは下回らない。
そんな事を思いながら少し汚れがついている所を拭いていると、デュマリオが対応していた客が三つ近くを購入し店を出て行った。
「デュマリオさん、どうしてこんなにも儲かっているのに僕たちを臨時で雇ったんですか。」
「理由は簡単だ。錬たちにやってほしいのはまずこの店じゃない。この店は俺と今いるスタッフで問題ない。」
「なら、どうして。」
「話は最後まで聞け。街のはずれとまでは言わないがダンジョンも少し離れていて、魔物と戦うにも少し距離がある場所に店を持っているんだ。そこを君たちに頼みたいんだ。」
「まさか、誰も経営してないとかないですよね。」
「いえ、潰れずにギリギリでやっているらしい。」
「らしい、まさかデュマリオさんは行ってないんですか。」
「あぁ、もう興味が無いからな。あっちの店が頭を下げて頼んできたから一度のチャンスを与えただけだ。」
少し、デュマリオは悲しそうな顔をするが錬は気づかなかった。
錬はデュマリオに何かを言おうとするが、次の客が入ってきたため何も言えなかった。