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 何日かぶりに訪れた「出島」。

 先の訪問では泥棒のようにコソコソしていたが、今回は覇王のように堂々と橋を渡ろう……と思っていたが、できなかった。


 部室棟はどこも、人でごったがえしていたからだ。

 運動部のヤツらだけじゃない、『開部の儀』を見るために学園じゅうの人が集まっているみてぇだ。


 迷路みたいな通路にはなぜか露店が出ており、まるで学祭のような賑わいを見せている。

 俺は満員電車のサラリーマンのように人ごみをかき分け、進んでいった。


 「廃墟」のまわりは、巨大盆踊り会場さながらだった。


 ツタのからまったビルをやぐらとするならば、まわりにうじゃうじゃと集まっているのは踊るアホウども。

 四方を囲むように巨大モニターが設置され、ビルの入り口や観客の姿が映し出されている。


 しかもなぜか特設ステージまであって、そこではヒステリックにがなりたてるヤツらがいた。


「女性の尊厳を踏みにじり、女性の社会進出を阻害するハーレム同好会、はんたーい!!!」


 スピーカーからの声の続いて、


「はんたーい!!!」


 とシュプレヒコールをあげる女ども。


 ハーレム同好会は、もうすっかり周知の事実のようだ。

 俺だけのことかと思ったら、これだけ大勢のヤツが勝手に首を突っ込んで、勝手に盛り上がって、勝手に反対してやがる。


 まぁ、せいぜいバカ騒ぎをしてるがいいさ。

 明日にはここにいる全員、俺に歓声を送る愚民どもになっているんだからな。


 人をかきわけかきわけビルの入り口に近づいていくと、チェーンポールで区切られた広い空間があった。

 乗り越えて中に入ろうとすると、サングラスにスーツの女性たちが走り寄ってきた。


「入ってはいけません!」


 と注意されたのでビクッとなったが、俺の顔を見るなり、


「……寿、三十郎ですね!? こちらへ!」


 と引っ張り込まれてしまった。


 周囲の巨大モニターがどれも、俺をアップで映し出す。

 どおっ! と噴火するように沸き立つ観客たち。


「アイツが、『開部の儀』に挑戦するヤツらしいぞ!」


「なんか、パッとしねぇヤツだな!」


「あっ、アイツ、俺のクラスのヤツじゃん!」


「マジ!? なんてヤツ!?」


「えーっと、知らねぇ!」


 なんていう言葉も聞き逃さないほど、俺は落ち着いていた。


 昔の俺だったら腰を抜かしてたかもしれねぇが、ここんところ注目されっぱなしだったからな……もうだいぶ慣れちまった。

 何千人もの美女に比べたら、コイツらはカボチャ同然だ。


 俺は騒音のなか、スーツの美女に取り囲まれる。

 コイツらは理事長によって派遣された『開部の儀』の運営スタッフらしく、まずはルールについて説明された。



 ルール1 『開部の儀』(以下、儀式)には、ハーレム同好会の発起人となる人物が部室内に入った時点で、開始したものとみなされる。


 ルール2 儀式は部室内のどこかにいる、錠前により拘束されている人質を救出するのが目的である。


 ルール3 錠前を外すための鍵は、部室内のどこかに必ずある。


 ルール4 人質の身柄とともに、部室から出ることができれば目的達成とする。


 ルール5 目的達成が確認された時点で、ハーレム同好会の開設は正式に認められる。同時に部室は、ハーレム同好会のものとなる。


 ルール6 いちど儀式を開始したが最後、目的達成まで部室から出てはならない。目的達成前に部室から出てしまった場合、いかなる理由にかかわらず失敗とする。


 ルール7 儀式を行うハーレム同好会の発起人は、着衣以外のものを持ち込んではならない。ただし、他の参加者についてはその制限を受けない。



 ルールを聞きながら、俺は身体検査を受ける。

 所持していたスマホと弁当箱、そしてデレノートまで没収されてしまった。


 くそ……最後の手段として持ってきていたノートが取られちまった。

 強敵が立ちはだかった場合、最悪、寿命を払ってノートに名前を書いてやろうと思ってたのに……それができなくなっちまった。


 となると……俺の武器は『VRバンダナ』と『きせかえグローブ』だけってことか……。

 どちらも戦いに使えるモノではないので、ようはチーターの能力に頼らず、身ひとつで戦えってことなんだろう。


 検査をパスした俺は、「廃墟」のビルの入り口に案内される。


 コンビニとかにありそうな、観音開きのガラス扉。

 いつもは引き手をチェーンでグルグル巻きにされて入れないようになってるんだが、今日は鎖が取り払われていた。


 この扉をくぐれば、『開部の儀』の始まりらしい。


 もはや、迷うことなんて何もねぇ。

 俺は焦ることも、臆すこともせず、普段どおりの歩みで、運命の扉に近づく。


 押し開けた瞬間、


「これより……『開部の儀』を行うっ!!!!!」


 厳格な男の声が、スピーカーを通して響きわたる。

 呼応するように、さらに大きくなる歓声。


 それは別にいいんだが……なぜか花火まで打ち上げられたようだ。

 俺は、空を駆け抜ける軽快な爆発音を聞きながら……扉をくぐった。

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