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 現在のレベル:3・似非リア充レベル

 次のレベル:4・リア充レベル(???)

 レベルアップ特典:デレノート使用時の寿命減少が1割からゼロに

 レベルアップ条件: ハーレム同好会を設立する

 ファーストキス難易度:一般ユーザーとして、無課金でソシャゲランキング1位獲得と同等の努力を要する

 卒業難易度: NASAの事故確率と同等の運を要する

 備考:ただし対象を家族か男友達とした場合、土下座だけで達成可能


 次のレベル……リア充レベルの横にあるハテナマークが気になるが、それはまあ、いい。

 リア充になれば、たしかにデレノートの寿命減少がゼロになるみたいだからな。


 しかし……そうなるためのレベルアップ条件は、かつてないものだった。


「って……おい! 同好会ってなんだよ!?」


「旦那の学校には同好会の制度があるんやろ?

 それを利用して、ハーレム同好会を設立せいっちゅうこっちゃ」


 ナビゲーション妖精を問い詰めてみたが、事も無げに返されちまった。


 たしかにそういう制度はあるみたいだが……そもそもハーレムって、同好会でやるもんなのか?

 活動内容が全然想像がつかえねぇ……。


「ハーレム同好会……」


 口にしてみると、その異様さが際立つ。


「ノーベル殺人賞……みたいに言うなや」


「でも、いくらうちの学校が自由な校風だからって、ハーレム同好会は無理だろ……!?」


「でも、デレノートの指令は絶対やからねぇ」


「くそ、これをやらなきゃリア充……ひいてはデレノートの使い放題はムリってわけか……」


 文句をつけていてもしょうがなかったので、俺はスマホを操作して、学校のホームページを見てみた。

 『校則』のページ内にある、各種規則『部・同好会の設立について』の項目を調べてみる。


 それによると同好会というのは、

 本校の教育方針に合致する活動内容で、

 部長にあたる一名の発起人と、参加を希望する八名以上の部員がおり、

 活動のための部室と、顧問の教諭を有している、


 ……というものらしい。

 今の俺には無い無い尽くしの条件だ。


 ハーレムってのがそもそも教育とはかけ離れた概念だし、

 参加を希望するのは今のところ……リンだけだし、

 活動のための部室なんてのももちろんねぇし、

 こんな酔狂な同好会の顧問をやりたがる、教師なんて……。


 いや、ひとり、いるかもしれねぇ。

 心あたりが、ひとりだけいる。

 もしかしたらイケるかもしれねぇな。


 それに、顧問の教師を確保できたなら……それは教師のお墨付きをもらえてるってことだから、他の条件を達成するための後ろ盾になるだろう。

 そうだ、まずは顧問だ、顧問をゲットしよう。


 俺は椅子から立ち上がると、テュリスを引き連れ部屋を出た。


 1階のリビングに降りてみると……山のように積まれたイチゴのヘタ取りをしながらテレビを観ているバンビがいた。

 いつもこの時期になると、どこからかは知らんが大量のイチゴを貰うらしく、食べきれない分はイチゴジャムにするのが我が家の風習なんだ。


 台所からはトントンとまな板を打つ音がする。

 背中を向けてキッチンに立っているルナナは、包丁で何かを刻んでいるようだった。


 リズミカルで、楽器を演奏してるみたいな後ろ姿。

 アイツはいつも、幸せいっぱいの新婚さんみたいに料理するんだよな。


 食べてくれる人のことを想像すると、とにかく嬉しいらしい。

 俺とバンビのメシを食う姿なんて、もうとっくに見飽きてるだろうに……。


「おい、ルナナ」


 若奥さんに声をかけると「なあに? サンちゃん」と振り向こうとしたので、声で押しとどめた。


「あ、そのままでいい。わざわざこっち向く必要はねぇよ。料理しながら聞いてくれ」


「はぁい」


 素直な返事とともに、調理を再開するルナナ。


 話題が話題だけに、このほうが話しやすい。

 コイツに相談なんて、ちょっと照れくさい気もするしな。


「俺……同好会をやりてぇんだ」


「同好会? 学校の?」


「ああ、そうだ。それもどっかに入りてぇってわけじゃなくて、新しい同好会……ハーレム同好会を作りてぇんだ。

 そこでルナナ、お前に顧問になってもらいてぇんだが……」


 ピタッ、とルナナの手が止まった。急に静まり返るダイニング。

 俺の背後からかすかに聞こえる、テレビの音だけになった。


「さ……サンちゃんっ……ほ……ホントにっ!?」


 そして、驚きと困惑が入り混じったような、大げさな声。

 俺は顧問を頼んだだけなのに、なんでプロポーズをしたみたいな反応をするんだよ。


 フラッと立ち寄ったくらいの気軽さで頼んだのに、まさかこんなリアクションが返ってくるとは……完全に想定外だった。

 ハードルが、グンと高くなったのを感じる。


 ルナナは昔から、どんなことを頼んでも断ることだけはしなかったのに……。

 いつもこっちが引くくらいのやる気で、乗ってくれるのに……。


 今回に限っては、だいぶ様相が違う。

 これ、もしかしたら……NGもあるか……?


 ルナナの決断や、いかに……!?

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