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079

 桜葉町の駅にさしかかったところで、男たちの手によって人通りの少ない路地に連れ込まれようとするエリカの後ろ姿を見つけた。

 もう胴上げはされておらず、連れ立って歩いている。


 でも、そんなことはどうでもいい。

 俺は自転車を乗り捨てると、雄叫びをあげながら後を追い、敵の群れに突っ込んでいく。


 驚いた顔で振り向くエリカ。その瞳の端には涙が滲んでいた。

 それが俺を、さらに奮い立たせる。


 遅ればせながら振り向いたレオンに、家から持ってきたモップで胴打ちをかます。

 ぐふっ! と息を吐きながら身体をくの字にまげる優男。


「遅れて悪かったな! さぁ、あん時みたいに暴れようぜ!」


 俺はカッコよくポーズをキメながら、もう一本のモップをエリカに向かって投げた。


「てめぇ!? 冴樹クンになにしやがる!?」


「あっ、コイツ、三十郎じゃねぇか!」


「いきなり棒なんかで殴りやがって、お前キチってんじゃねーか!?」


「きめえよ、コイツ、ムカつくからやっちまおうぜ!」


 取り巻きたちは、雑魚らしい台詞を吐きつつ俺を取り囲む。


 俺は棒術の達人のようにモップを構え、用心深く対峙する。

 相手はレオンを含めて五人か……と思っていたら、いきなり後ろから、ガツンとした衝撃が襲った。


 たまらずブッ倒れ、誰だ!? と思って見上げると、


「いきなり何? ウチのグループに手ぇ出すなんて……死にてぇの? チョロ男」


 モップの柄を突きつけた、般若のような形相のエリカだった。

 それで俺は思い出す。


 そうだ……あの時の俺は、エリカの涙に完全に動転しちまってたんだ。

 あの涙を止めるにはどうしたらいいんだと取り乱し、デレノートの効果を無くせばいいんじゃねぇかと破っちまったんだ。


 それだけじゃ足りなくて、連れ去られるエリカを助けに行った。

 だけどよく考えたら、もうエリカは俺のことが好きでもなんでもねぇんじゃねぇか……!


 ……もちろん、今更気づいても遅いんだけどな。


 それから、俺はエリカ軍団にボコボコにやられた。それも念入りに。

 リーダーに至っては今までの洗脳の鬱憤を晴らすように、モップが折れるほどに殴打してきやがった。


 取り巻きも容赦してくれなかった。

 だって、先に手を出したのは向こうじゃなくてこっちなんだから、遠慮もないだろう。


 正義は一切、俺にはなかった。

 俺は胸ぐらを掴まれ立たされ、顔の形が変わるくらいまで殴られた。

 そしてうずくまったところを、内臓が破裂するかと思うほど蹴られた。


 全身アザだらけにさせられたあと、


「二度とウチらに近づくんじゃねぇーぞ」


 とギャル唾を吐きかけられて、ようやく解放された。


 もらったばかりの誕生日プレゼントの服も、二回しか着てないのにボロ布になっちまった。

 まともに立てなかったので、這うようにして家まで戻った。


 玄関に着いた頃には日付が変わっていた。

 不幸にも、というか、幸いにも、というか、ルナナもバンビも寝静まっていたので大騒ぎにならずにすんだ。


「わぁ!? どないしてん!? ドラえもんが帰ったときの、のび太みたいになっとるやん!」


 部屋に戻ると、いつもの調子に戻った妖精が迎えてくれた。


「理由は、勝手に推理してくれ……俺はもう、寝る……」


 俺は、ベッドに辿り着く前に力尽きた。

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[一言] 自業自得やね。今回は可哀想とは思わない
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