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「……そんなんじゃダメだな、床に土下座しろ。

 土下座して『三十郎様、このどうしようもない糞ビッチと、エッチを前提としたデートをしてください』と大きな声で言うんだ」


 俺が次に言い渡した試練……それは公開処刑。

 貴族、平民、貧民……すべての者たちの前で、女王をギロチンにかけてやることだった。


「えっ……」


 さすがのビッチもこれには引いたようだったが、


「嫌ならお前のとのデートは一生ナシだな」


 と条件の上乗せをしてやると、すがるような瞳に変わった。


「そ、そんな……! で、でも、本当にそれで、エリカとエッチデートしてくれるの?」


「ああ、誠心誠意お願いすれば、考えてやらなくもない」


 エリカはうつむき、悩むような仕草をしていたが、やがて無言でイスから立ち上がった。


 図書館と同じ、硬いノリウムの床。

 たしたしと上履きを鳴らし、その上に仁王立ちになる。


 決意するように顔をあげる。

 自慢のエアリーカールの髪と、短いスカートに空気を含ませるようにふわっとさせながら……冷たい床に伏した。


 大昔の新婚初夜を彷彿とさせる三つ指で、額をこすりつけるほど深々と頭を下げると、


「さ……三十郎様っ、このどうしようもな糞ビッチと、エッチを前提としたデートをしてくださいっ」


 顔を伏せているため声はこもりがちだったが、ハッキリと言ってのけた。


 瞬間、ゾクゾゾクゾク……っと、俺の足元から快感が這い上がってくる。

 た、たまらねぇ……! 女に土下座させるってのは、こんなに気分がいいものだったのか……!


 これにはさすがに何事かと寄ってくる者たちがいた。

 レオンやリンも立ち上がってこちらを見ている。


 俺はそれをアンコールと解釈した。


「あぁん? 聞こえねぇなぁ……顔をあげてもいいから、もっと声を出せ。

 この食堂じゅうに響くような大声でお願いするんだ」


 刑吏である俺の言葉に、パッと顔をあげる女王。

 きつく目を閉じたまま、ヤケ気味に声を張り上げる。


「さ……三十郎様っ! このどうしようもな糞ビッチと! エッチを前提とした! デートをしてくださいっ!」


 それは嬌声のように、耳に心地よかった。

 恥知らずな声が響きわたると、さらに衆人の注目が集まる。


 周囲のキョロ充はもちろんのこと、上流のリア充も、普段は他人に興味を示さない下流のぼっちですらも、何事かと集まってきていた。


 誰もが注目する、騒ぎのど真ん中にいるのは……俺! そう、俺様なんだ……!

 俺は、座っていなければ腰くだけになっていたであろうほどの快感に包まれていた。


「も、もっとだ。カラオケの時はもっとデカイ声を出してるんだろ? 腹の底から声を出せ、もう一度だ!」


 命令に愚直なほど素直に、すぅーっと息を吸い込むエリカ。

 顔を真っ赤にしながら、さらに声を張り上げる。


「さ……さんじゅうろうさまぁっ!! このどうしようもないくそびっちとぉっ!!

 えっちをぜんていとしたぁ!! でーとをしてくださいいいいいっ!!」


 厨房にいたおばちゃんまでが飛び出してくるほどの、命がけの直訴が轟く。


「まだまだっ、もう一声! 俺とデートしたくねぇのかっ!?」


「さ、さんじゅうろう、さまあああああーっ!!!」


 呼吸困難のような虚ろな瞳で、裏返った絶叫をあげるエリカ。

 それは、ブラック企業の新人教育の光景のようだった。


「てめえっ! エリカになんてことさせてんだ!」


 俺の暴虐にガマンできなくなったのか、人混みかきわけ殴りかかってこようとするレオン。

 しかしエリカがかばってくれて、かわりに殴られてくれた。


 それがだいぶショックだったのか、クラスいちのイケメンはそれで大人しくなる。

 エリカはまさに俺だけのターミネーター。女王を従えた俺は無敵となったのだ。


 もはや俺を止められるのは、この学校では誰もいねぇ……!

 道を歩けば、畏怖と畏敬の念を込めた視線が集まり、モーセの奇跡のように人垣が分かれる……!


 妖精は呆れた様子だったが、特に何も言わなかった。

 ただ、リンだけはずっと、俺を責めるような視線を向けていた。


 ……それがトゲのように胸にチクリと刺さったのは、たぶん気のせいだろう。

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