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「……なるほどな。

 旦那がチーターの力を手にしたとき、弱味を握るとか、手下にするとか……ゲスなことばっか考えとったのは、そういうワケやったんやな」


「そうさ、俺のまわりにいるヤツらなんて、好きになる価値なんてまるでねぇゴミばっかりだ。

 奴隷にでもして、使い捨ててやるのがお似合いさ」


 過去の告白によって、俺の心に黒い霧がたちこめているのを感じていた。

 言葉も自然と、薄汚れたものになっていく。


 でも……それが本来の俺だ。

 リンを手下にしてから、ちょっと変な熱に当てられちまって、忘れかけていたが……友達や恋人なんて、本当はありえねぇ。


 キレイな言葉で偽ってるだけで、ようは征服するか、されるかの関係じゃねぇか。

 だったら俺は征服する……そうじゃなけりゃ、何もいらねぇ。ひとりでたくさんだ。


 俺は、自分の孤高っぷりを再認識していた。


 我ながらニヒルな表情を浮かべていたつもりだったが……妖精の反応は、成人式で暴れる若者をニュースで眺めているかのように、冷ややかだった。


「まぁ、そう思い込むのは勝手なんやけど……全然できてへんやん。

 今でも惚れっぽくて、相変わらずコロッとやられとるやないか」


「……そんなこと、ねぇよ」


「だからそうやって、いくら斜に構えてみても旦那の根っこは変わってへんのやって。

 弱味を握ってとか言うとるけど涙に弱いし、ひとりでええなんて言うとるけど惚れっぽいし……まるで一次反抗期の幼稚園児みたいやないか」


「……なんだと?」


 イラッときた俺は、目の前で浮かんでいるテュリスを乱暴に掴んだ。

 するといつもなら暴れるのに、その時だけはじっとしたままだった。


 ……気に入らねぇ。

 脅かすつもりで振りかぶると、ちょうど妖精が耳元に来た。


「……でも、旦那はそれでええと思うで」


 ささやきかけられて、思わず手が止まる。


「何度騙されても、何度でも信じられる。

 そしていっしょにマジになれる……それはやろうと思ってできることやないで」


 口調には、もう冷たさはなかった。

 全てを受け入れてくれる母親のような、不思議なあたたかみに溢れている。


「でもな、ひとつだけアドバイスや。

 人を信じて、マジになる前に、一瞬だけ立ち止まってみてや。

 そして、少しだけ考えてみることや。

 それだけ、それだけでええ……それだけで、旦那は人生はずっと良くなるはずやで」


 俺は無言のまま、握りしめたモノをポイと放り捨てた。

 テュリスはそのまま空中で体勢を立て直すと、ブーメランのように戻ってくる。


「よぉし、旦那のギャルへの思いはわかったでぇ!

 こうなったら、ヒィヒィ言わせたらなアカンな! じゃあ早速、視てみるかい!」


 その屈託のなさすぎる態度と、顔デカのピーターパンが飛んでくるようなビジュアルに、俺はついフッと笑ってしまった。


 バンダナを降ろしながら、エリカの顔を思い浮かべる。

 ムカつくからヤツのことはあまり考えないようにしてるんだが、今は別だ。


 急に甘ったるい香りがしたので瞼を開くと、そこは、一面のピンクが広がる、おそらくエリカの部屋だった。


 壁紙こそ白だが、天井までもを覆うレースカーテン、壁際にある机のマット、イスのクッションと脚カバー、さらに床のカーペットにいたるまで全部ピンク。

 しかも単色のピンクじゃなくて、なんか変な虎縞みたいな模様が入っている。


「家具まで桃色やで、徹底しとるなぁ」


 テュリスが飛んでいった先には、ピンク色のタンスとドレッサーがあった。


 タンスの上には薄桃色の煙を吹きだす、これまたピンクのアロマデュフューザーがある。

 コイツが部屋を漂う甘いニオイの発生源だろう。


 その隣には、アルマジロと桃が合体したようなゆるキャラのぬいぐるみが、いくつも並んでいる。

 それは初めてもらったラブレターに描かれていたのと同じキャラクターのヤツで、なんとなく胸のあたりに苦いものがこみあげてきた。


 気分が悪かったので振り払うように後ろを向いたのだが、


「うおっ!?」


 待ち構えていた光景は予想だにしなかったものだったので、振り向きざまにブン殴られたみたいな衝撃を受けちまった。


 俺の背後にはベッドがあって、その上にはネグリジェ姿のエリカが無言で腰掛けてたんだ。


 それだけならまだいい。ここはエリカの部屋だから、なんの不自然さもない。

 それに無言ってのもわかる。部屋にはエリカひとりだけだからな。


 だが……だが……!


「ウッヒョー! 生乳やないか! セイニュウちゃうで、ナマチチや!

 しかも揉みしだいとるでぇ!?」


 テュリスの下品な歓声のとおり、ネグリジェからメロンみたいな胸をはだけさせたエリカが、自らの手で揉みこんでいる真っ最中だったのだ。


 手では半分ほどしか覆えていない大ボリュームのものを、ぐにぐにと生地のようにこね回している。

 バケツプリンかと思うようなその物体は、その見た目に違わぬ柔軟さで、めり込む指の形に合わせて面白いようにむにゅむにゅ形を変えていた。


 押された拍子に、指の間や横からぷにっとはみ出すのがまたエロい。


「う……おお……!」


 俺は驚嘆の声とともにのけぞった身体を立て直す。


 そしてもっと間近で見てやろうと前かがみになって胸元に顔を近づける。

 一緒になってテュリスも寄ってきた。

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