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065 ギャルを落とせ

 いろいろあったが、俺とテュリスは作戦会議を再開した。


「……さて、だいぶかかってもうたけど、次のレベルアップの話や」


「えっと……ギャルを口説き落とせばいいんだな?」


 ページ押さえみたいに妖精が乗っているデレノート、俺はその足先にある「レベルアップ条件」に再び目を通していた。


 レベルアップ条件: ギャルをひとり口説く


 とある。


「うぃ、そうや。旦那、キョロ充とリア充の最大の違いってなにかわかるか?」


 俺は少し考えてから口を開く。


「……人に集まるか、人を集めるか、の違いか?」


 我ながらいい回答だと思ったが、テュリスは容赦なく首を左右に振った。


「ちゃうちゃう。ギャルに相手にされるかどうか、ってことや」


「キョロ充は、ギャルに相手にされねぇのか?」


「うぃ。ギャルにとってキョロ充は子豚みたいなもんや。

 ブヒブヒとブサ可愛い姿で目を楽しませてくれて、その上食べるとおいしい……。

 アイドルとファン、キャバ嬢と客の関係と同じやね」


「なんか、残酷すぎるな……」


「だからキョロ充のまんまやと、捕食されてばっかりなんやで!

 リア充で対等、ハーレム王で立場が逆転……ギャルを食らう存在になれるんや!

 だからここは気ばりどころやで!」


「そうか……気ばりどころか……」


 そう言われると、なんだか気を引き締めなきゃいけねぇな。


 それに……相手がギャルとなると、ターゲットはアイツしかいねぇ……!

 考えるだけで忸怩(じくじ)の念が、ジクジクと膿のように染み出してくるアイツ……!


 俺はデレノートの隣に置いてあった、中学の卒業アルバムを手に取る。

 一発で開いたページにある、嫌でも目立つ女を爪先でズンと突いた。


「ヤルのはコイツだ……雷横(らいおう)恵里果(エリカ)


 まだ化粧っ気のない女どものなかで、ひときわ派手な顔立ち、卒業写真なのに着崩した胸元の女。

 ひと目でギャル、ひと目でビッチとわかる、ケバい女……!


「おお、文句ナシのギャルやないか。それどころか最上級のギャルやで。

 スライムの相手もようやっとの旦那にしちゃ、荷が重すぎひんか?

 ドラゴンくらいあるやん」


「リア充を目指すんだったら……コイツとは絶対にケリをつける必要があるんだ」


 俺の重々しい雰囲気が伝わったのか、テュリスの興味の対象が移った。

 好奇心に満ちた顔で、俺を見上げてくる。


「なんやなんや、ただならぬ思いがありそうやな?」


「……俺が小学6年のときに、初めてラブレターをもらった相手だ」


「ほほう、なんか古風やなぁ。今どきはメールやと思っとったけど」


「学校で手紙を書く授業があって、それから俺らの学年の間で、しばらく流行った時があったんだよ」


「そうなんや、でもええやん。

 手紙で告白とかワイの大好物やで、それだけでメシ何杯もいけるわ。

 もっと詳しく聞かせてや」


 まるで絵本の読み聞かせを待っている子供みたいに、ウキウキと身体を揺らしている妖精。


「しょうがねぇな……」


 コイツには隠しても無駄だろうと思い、俺は話してやった。



 小学6年のある朝、下駄箱に入っていた、一通の封筒。

 それは当時女どもの間で人気だった、アルマジロのゆるキャラみたいなのが描かれた可愛らしいピンクのやつだった。


 最初はなんだかわからなかったけど、ハートのシールでそれがラブレターだと気づいた。

 誰にも見られないようにサッとカバンに滑り込ませ、何事もなかったようにホームルーム……ガキの頃だと、朝の会か、ともかく教室に向かったんだ。


 休み時間は友達に囲まれてるので見るヒマがなかったから、こっそり授業中に見た。

 もうドキドキしたね。手紙までいい匂いだったのがもうたまらなかった、一生宝物にしようと思ったよ。


 内容もいまだに覚えていて、ソラで言える。



 Dear.三十郎


 突然の手紙、びっくりした?

 手紙を出す授業をやったから、ついでに書いてみたんだ。


 あ、今のナシ。ついでなんかじゃないや、むしろこっちが本命かもしんない。


 ずっと三十郎に伝えたいことがあったんだ。

 メールとかでもよかったんだけど、ちょっと勇気がなくって……でも、手紙だったらうまく言えるかな、と思って。


 三十郎ってさ、ちょっとKYなトコあるよね。

 たまにアツくなって、マジになったりするじゃん?


 それがウザいって子もいるんだけど、ウチはなんていうか、そういう三十郎がイイな、って思ってたんだ。


 ウチが食堂で高等部のキモいのと言い争いになってぶたれたとき、相手が五人もいるのに三十郎、ひとりで向かってくれたもんね。

 あん時、ふたりしてモップとか振り回してたよね、チョーウケる。


 だからね、


 もしよかったら、私と付き合ってください。


 ああ、ヤベ、言っちゃった。こんな気持ち、初めてかもしんない。


 返事、聞かせて。


 ウチのまわりにはいつも誰かいるから、休み時間じゃなくて、放課後とか、どうかな?

 今日の放課後、北門のところで待ってます。


 P.S.

 もちろん、嫌だったら断ってくれてもいいよ。来なくてもいい。

 でも、それでも、友達として、いつもみたいに仲良くしてほしいな。


 From.エリカ



 俺はそれから放課後まで、ソワソワしっぱなしだった。

 頭の中は手紙の主のことでいっぱいだった。


 雷横エリカ。

 やたらと強気な性格で、負けず嫌い……肩がぶつかったりすると、上級生の男相手でも平気でやりあうヤツだった。


 それに加えてグイグイ引っ張っていくタイプだったから、女子連中でもリーダー格だったな。

 いわゆる女王様タイプってやつだ。


 顔は学年でもダントツの可愛さで、まだ小学生なのに胸も張ってたんだよなぁ……。

 それまではエリカのことをエロい目で見たことは何度もあったが……付き合いたいとか、そういう感情は抱かなかった。


 でも、このラブレターでイチコロだった。

 あの男勝りのエリカが、あの大人みたいな身体したエリカが、ラブレターだなんて……可愛いところもあるじゃねぇか……! と。


 エリカとは違うクラスだったのが、不幸中の幸いだった。

 もし同じクラスだったら、ずっとエリカのことを見つめてたかもしれない。

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