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 妖精はシキの写真を見つけると、オマルをずりずりと引きずって近づいていく。

 見下ろしたあと、確認するように頷いた。


「……うぃ、やっぱりや。見てみ、年を取るごとに地味になっていっとる。

 中学にあがる頃には今の眼鏡女のスタイルができあがっとるんや」


 たしかに小学校低学年のころは、シキというより声優のハルカの子供の頃っぽい。


 そこからアルバムのページをめくり、学年を重ねていくと……ハルカからじょじょに今のシキに変貌を遂げていた。

 サナギから蝶になるように……という言葉があるが、その逆、蝶のようだった少女はどんどん殻に閉じこもっていったようだった。


 六年生になる頃にはすでに原型に近く、肩までの三つ編みに眼鏡をかけ、ブラウスに吊りスカートという制服じみた格好をしている。

 どの写真でも、撮られるのを避けるかのように隅っこでうつむいていた。


「これが意味するものはなんだ?」


「もう、ひとつしかないやろ……」


 妖精は気を持たせるようにパイプを咥え、煙突のような穴から白い煙を立ち上らせた後、


「地声へのコンプレックス……や」


 吸口を噛み締めたままニヤリと片笑んだ。


 その笑みがあまりにも嫌らしかったので、


「……なぁ、お前……本当に妖精か? 実はチャッキーが憑依したねんどろいどとかじゃぇねだろうな?」


「ちゃうわ! そういうこと言う人、嫌いです! もう推理やめたろか!? じっちゃんの名にかけて!」


 妖精がプリプリしだしたので、俺は慌ててなだめる。


「悪い悪い、続けてくれ、地声へのコンプレックス、だったよな?」


 でも、さほど怒ってなかったのか、すぐに気を取り直して推理を再開してくれた。


「うぃ、そうや。

 おしりかじり虫何世かっちゅうような地声は、低学年の頃はまだ良かったんやろうけど、学年があがるにつれて変やって笑われるようになったんやろうね。

 それがトラウマになって、地声を隠すようなボソボソしゃべりになってもうたんやろうね」


「なるほど、それで人離れに拍車がかかり、あんなコミュニケーション下手になっちまったってことか……。

 でも、それでなんで三つ編み眼鏡になるんだ?」


「目立ちたくない言うとったやろ?

 ボソボソしゃべりで失望されるより、なるべく話しかけられんようにしたかったんやろうなぁ」


「そういうことか……コイツにも、いろいろあったんだなぁ……」


 それが事実かどうかはわからないが、妖精の推理は当たっていような気がする。

 そして俺は、アルバムの向こうのシキに親近感のようなものを感じ始めていた。


「さぁて、おやすみなさーい!」


 元気な子供のような声が割り込んできたのでバンダナを降ろすと、成長したシキのほうはいつの間にかベッドの上で横になっていた。

 真っ暗では眠れないタイプなのか、常夜灯がともっている。


「あぁ、早く明日にならないかなぁ。

 リンリンさんと三十郎さんと、いっぱいおしゃべりするんだ!

 でないと嫌われちゃうもんね! がんばれよぉ、私! ふぁいと!」


 天井を見つめる瞳は、オレンジの薄明かりのなかでもわかるほど光り輝いている。

 遠足が楽しみでしょうがない園児みたいだ。


「虫歯に響くような声やなぁ」


「お前も似たようなもんだろ」


 反射的に突っ込んだあと、別にフォローってわけじゃねぇんだが、俺は続けた。


「……でも、お前もシキも、別に変な声じゃねぇと思うんだがなぁ、俺は……」


「なら、それを伝えたったらええやん。喜ぶで」


「そうかあ?」


「そりゃもう! だって、ボクが三十郎に変な声じゃないって言われたとき、メチャクチャ嬉しかったんだもん!」


 照れ隠しなのかなんなのか、テュリスはなぜかリンのマネをしていた。

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