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「ちょっと三十郎! ボクの声、聞こえてる!? ……あっ、この人形だね!?

 頭でっかちで確かに可愛いけど、人形なんかに話しかけちゃダメだよ!

 しっかりして、三十郎! 話すならボクに話してよ!」 


 リンの手によって、ガクガク揺さぶられる俺。

 すっかり抜け殻となっていたが、そのかわりに頭でっかちが余計な気を利かせやがった。


「そこへんにしとけやストップひばりくん!

 旦那をシゴくんなら掃除用具入れの中でやれや! 毎度お騒がせするつもりかい!?」


 俺のポケットから発せられた、教室じゅうに響きわたる妖精特有のキンキン声。

 それはクラスじゅうの注目を集め、揺さぶっていた手をピタリと止めた。


「それに誰が頭でっかちやねん!? スーパー頭突きくらわしたろか!

 おい、ケンタ買うてこいや! その骨でマゲを……んがぐぐっ!?」


 耳障りな怒声に辛うじて正気を取り戻した俺は、胸ポケットの人形をわし掴みにして黙らせる。


「け……ケン……タ……?」


 リンは驚きのあまり、目が点になっていた。


 無理もない、人形だと思っていた存在が突然しゃべりだしたのだ。

 俺が初めてテュリスに会ったときも、こんなだったかもしれない。


 俺は気付けがわりと、誤魔化しも兼ねて怪鳥のような声を絞り出す。


「ケッ、クケェーッ! キケェェェェーーーッ!」


 ビクッと肩を震わせるリンの瞳に、光が戻った。

 手のなかでモガムグと暴れる妖精を握りしめたまま、俺はアテレコを開始する。


「ケ……ケンタ……! ケンタクン! ボクハニンギョウナンカジャナイヨ!」


「それなら俺だって、ケンタじゃねぇよ、俺は三十郎だ」


「ソウダッケー? アハハハハハハハ!」


「そうだよ、オッチョコチョイだなぁ、アハハハハハハハ!」


 俺は付け焼き刃の腹話術を全力で披露しながら、カニのように横移動する。

 扉まで来た時点でテュリスをズボンのポケットに突っ込み、万引き犯のように教室から飛び出した。


 背中に突き刺さるクラスメイトの視線が痛かったが、振り払うように走り出す。

 「待って、三十郎!」とリンが追いかけてきたが、もちろん待つつもりはなかった。


 あ、そういえば、コイツは足が速かったんだ……と捕まってから思い出した。


 それから人気(ひとけ)のない場所に連行され、説明を要求された。


 生けるねんどろいどを目撃されてしまった以上、下手に隠し立てをしてもしょうがないと諦め、もうバラしちまうことにする。


 ハーレム王を目指すにあたってこれから先、リンの協力は不可欠になるだろう。

 それならばいっそのこと妖精のことも含めて教えちまったほうがいいんじゃないかと考えたからだ。


 そして覚悟を決め、リンに話した。全容のほぼ九割、ほとんどのことを。


 俺の家系は『愛の神(ラブ・ゴッド)』に仕える神獣チーターの一族で、俺はその後継者として選ばれた。

 その結果、チーターの力と妖精を授かったこと。この変なバンダナとグローブがその証であること。


 オヤジのハーレムにはオフクロがいて、オヤジが言うには俺がハーレム王になれば、オフクロが帰ってくるということ。

 妹がオフクロに会いたがっているので、俺がハーレム王になってオフクロを、そしてオヤジも連れ戻し、家族を元通りにしたいということ。


 ハーレム王になる具体的な方法としては、変なノートがあって、それの指示に従っているということ。


 そして、次の指示は『異性の友達を作ること』であるということ。

 そのターゲットとしてシキを選んでいて、ゆくゆくはリンのようにハーレム入りをさせようとしていること。


 ほぼ……洗いざらいの告白。

 ただ、部屋を覗く力のことと、その力を使ってリンの部屋を覗いたということだけは秘密にしておいた。


「……それで、全部? もう、ボクに隠し事はない?」


 話を聞き終えたリンは、驚くことも笑うこともせず、静かに俺を見据えてそう尋ねてきた。


 男のクセに、彼氏の浮気を問い詰めるかのような絡みつくその瞳。


 でも、別にコイツは彼女ってわけじゃねぇから、隠し事をしてたってかまわねぇハズなんだが……なんだろうこの罪悪感。

 もう何もかも白状しちまったほうが楽になれるんじゃないかと思ったが……ぐっと堪える。


「……ないっ」


 俺は、男に二言はないとばかりにキッパリと言い切った。


「ホントだね? なら、信用する」


 リンを包んでいた緊張がふっと解け、いつもの微笑みが戻る。


「じゃあ、せっかくだから、妖精……テュリスちゃんにもう一度会わせてよ」


「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」


 俺がズボンのポケットから取り出すより早く、抜け出した妖精がリンの眼前に浮かんだ。


 その後、図らずともホームルームをサボってしまったので、ガラガラヘビが探しに来る前に教室に戻る。

 教室ではそれなりに注目を浴びてしまい、非常に居心地が悪かった。


 だがリンがクラスメイトたちに、あの人形みたいなのは最新式のロボットスマホだった……とさりげなく説明してくれたおかげで、針のようだった視線が綿棒くらいになって助かった。


 授業中はいつ妖精が暴走するか気が気ではなかったのだが、ずっとポケットの中で寝ててくれたのでこれも助かった。

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