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042

 この時間の西側は、この学園でもっとも暑っ苦しいエリアとなる。


 グラウンドや体育館、プールや道場などの運動にまつわる施設が集まっていて、放課後ともなると青春を謳歌する若者であふれるのだ。


 砂埃舞うグラウンド、芝生がまぶしいサッカーコート、黄色いボールと声が弾む女子テニスコート……。

 ジャンキーみたいに身体を酷使するヤツらを遠目に、俺は確信する。


 女子テニス部はジャージじゃなくて、練習でもテニススカートを穿けよ……と。

 ……いやいや、違う違う。運動は身体に悪い、と確信する。


 五月ともなるともう初夏だ。初がついているとはいえ夏だぞ。


 そんな季節に外で大騒ぎするなんて正気の沙汰じゃねぇ、間違いなく寿命を縮めるぞ。

 それを証拠にセミを見てみろ、一週間くらいしか生きてねぇじゃねぇか。


 でも……俺はリア充が早死にしようが皮膚ガンになろうが知ったこっちゃねぇ。

 俺は部室に用があるんだからな。


 部室はグラウンドと体育館に挟まれるようにして存在している。

 学年問わずごちゃ混ぜになっているので集落みたいな規模があり、お堀みたいなので囲まれているので通称「出島」と呼ばれている。


 余談になるが東にある文化系の部室棟のほうは「九龍城」だ。


 俺は、コンクリートの橋をわたって入島する。

 部活に所属していないので、ココに来るのは小学生ぶりくらいだ。


 江戸時代の長屋みたいに、連なった建物で迷路と化している中を歩く。

 いまはどこも部活に出ているのか、人気が全くといっていいほどない。


 閑散としているのに、運動部特有の熱気みたいなものを感じるのはなぜなんだろうか?

 漂ってくるホコリっぽさと、汗が混ざりあったような香ばしい匂いのせいだろうか。


 暑苦しさにむせびながら、ふと顔をあげると……ひときわ高い建物が目に入った。

 アレは出島の中央にある、通称「廃墟」と呼ばれる4階建てのビルだ。


 ツタが絡まりまくって緑色になっている古いビルで、かつてはアレも部室だったらしい。

 今は老朽化のせいか立入禁止となっており、入り口もチェーンでグルグル巻きにされて封鎖されている。


 さっさと取り壊せよ……と思うんだが、アレで怪我をするようなヤツが出ても、俺には関係ねぇ。

 それよりも、ここに来た目的は武器探しだ。


 あの待ち伏せストーカー女が包丁でも持ってたらヤバいから、こっちもそれなりの武装をするべきだと考えたのだ。

 ここなら武器になりそうなものはふんだんにあるはず。学校がゾンビが増殖しても立てこもれるほどに。


 俺は軒先にかかっている、何部かを示すプレートを便りに武器探しをした。


 まずは身を守る装備として、剣道部の防具と、アメフト部のヘルメットと、アイスホッケー部のプロテクターを借りた。

 これだけあれば、全身をしっかりガードできるだろう。


 そして肝心の武器としては、野球部のバットと、弓道部の弓と、薙刀部の薙刀を拝借した。

 これだけあれば、相手とどんな距離で戦っても攻撃手段に困ることはないだろう。


 ……全部を身につけるとメチャクチャ動きにくかったが、命のかかった戦いのためならしょうがねぇ。


 えっちらおっちらと歩いて、島を出る。


 敵の待ち伏せる校門に向かって進軍していると、かけ声とともにランニングをする生徒たちが正面からやって来たが、海が割れるように避けられてしまった。


 悪いがお前らと違って、こっちは遊びじゃねぇんだ……とお構いなしに突っ切る。


 下校をする生徒がチラホラと現れたはじめた校門に、俺は、じり、じり、とにじり寄っていく。

 帰宅部のやつらの注目の的だったが、ひと睨みすると逃げていった。

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