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027

「あっきれた!

 三十郎って、こうやって弱味につけ込まないと友達ひとり作れないの!?

 全然男らしくない! 友達くらい、堂々と作ればいいでしょ!」


 ちょっとカチンときた。

 言葉は悪ぃが、オカマに言われたくはねぇ。


「うるせぇなぁ……お前に言われたくねぇよ。

 コソコソ女の格好してるヤツのほうがよっぽど男らしくねぇじゃねぇか。やるなら堂々と」


 ダァン! というさらなる音で、俺の反撃は遮られた。

 もう片手もテーブルに打ちつけたリンは立ち上がり、勢いのまま詰め寄ってくる。


「それ、三十郎が言う!? 諸悪の根源のキミが!?」


 気迫負けした俺は、鬼刑事の取り調べを受けているチンピラのように、情けなくのけぞってしまった。


 あ……あれ? な……何か変じゃね?

 なんでこっちが責められてんの?


 話題としては、女装していることを黙ってやるかわりに友達になれって話だったよね?

 それがなんで、隠れ女装をしている原因が俺にあるみたいな話になっちゃってんの?


「ど、どういうことだってばよ!?」


 混乱する俺は、そう言い返すだけで精一杯だった。


 女装男子の言い分はこうだ。



 ガキの頃、仲良くしてくれた男の子がいた。

 その男の子はいつも一生懸命で、間違っていることにはどんな強い相手にも一歩も引かず、立ち向かっていく勇気があったそうだ。


 リンは子供の頃から女の子みたいな見た目で、気も弱かったからよくいじめられていたが、その子がいつも助けてくれたそうだ。

 リンのことを「相棒」と呼んでくれて、みんなが仲間外れにしてきても、その子だけは一緒に遊んでくれたらしい。


 その子と遊ぶうちに「友情」だと思っていた気持ちは、やがて「愛情」であることに気づく。

 男としてではなく、女としてその子と接したいと思うようになっていった。


 その時から、隠れて女の子の格好をするようになる。

 彼との日々を妄想しながら、どんどん女装にのめりこんでいったそうだ。


 しかし、性別へのギャップは日増しに大きくなっていくばかり。

 悩みに悩んだ挙句、彼にラブレターを出すことにした。

 ちょうどその頃、学校ではラブレターが流行っていたから、自然な形で思いを打ち明けることができると思ったからだ。


 彼ならきっと、自分の悩みをバカにせず、受け入れてくれるだろう。

 理想は恋人関係だったけど、せめて女の子の友達として接することができたらと思っていた。


 否定されたらスッパリとあきらめ、男の子として生きていくつもりだったが……もし想いが成就したら、親にも打ち明けようと決めていた。


 女の子として生きていきたいと正直に言って、女の子として学校に通おう。

 たとえ周りからどんな目で見られようとも、彼が味方でいてくれたら、耐えられる……。と思っていた。


 だが、現実は非情だった。


 朝、リンが学校の下駄箱の陰に隠れて待っていると……ラブレターを見つけた想い人はなんと、読みもせずにゴミ箱に入れたらしい。

 彼の出した答えは「否定」だったが……スッパリあきらめようにもあきらめきれない、ひどい否定のされ方だった。


 その出来事があって以来……リンは女装していることを隠して生きていこうと決めたそうだ。



 話を聞き終えた俺は、リンにすっかり同情していた。


 コイツは信じていた男に告白した。それには相当な勇気を必要としたことだろう。

 それに、キッパリ断られたというのであれば、まだあきらめもつくだろう。


 しかし……信じていた男は、思いを受け止めることすらしてくれなかった。

 女装に後ろめたさを感じつつも、未練がましくなってしまうのも無理のない話だ。


 好きだという気持ちを踏みにじられたことは俺にもある。

 その計り知れないショック……痛いほどわかるぞ……!


「……そうだったのか……お前にも、いろいろあったんだな……。

 そんな背景があったとも知らず、コソコソするななんて言って、すまなかった……」


 俺は自分なりの言葉で慰めてやろうと思ったが、なぜかリンをさらに興奮させてしまったようだ。


 まるで闘牛みたいに今にも突進してきそうな迫力で、ふぅふぅと息を荒くしだした。

 鼻息なんざ、蒸気みたいにプシュープシューいってやがる。


 どうやら、怒りの炎に油を、いや、爆弾かなにかを投入しちまったようだ。

 俺……なんか余計なこと、言っちまったか!?

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― 新着の感想 ―
[一言] お前が手紙捨てたんやろ!と誰もが突っ込むでしょうね
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