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018

 その後、自室を出た俺は、廊下を挟んだ向かいの部屋にいた。


 ここはストレージになっていて、俺の部屋と同じくらいの広さがある。

 中にはアニメのブルーレィディスクやゲームソフトのパッケージ、漫画や雑誌、ドールの箱などをしまってあるんだ。


 ちなみにルナナとバンビも同じような部屋を持っている。


 ルナナはゴルドニアファミリーのショールームみたいにしてるし、バンビはおびただしい量の服を詰め込んだウォークインクローゼットとして使っている。


 俺は愛しいコレクションたちの棚をぬって、部屋の奥へと行く。


 いちばん奥にある、いらないモノを詰め込んである本棚……「いつか捨てよう本棚」の中から、中学のときの卒業アルバムを引っ張り出す。


 男友達を作るにあたってターゲット選定をするために、卒アルをカタログがわりに見繕うことにしたわけだ。


「中学のときのアルバムって……メンツは同じなん?」


 飼い主の邪魔をする猫のように、広げたアルバムの上で大の字になっていたテュリスは、知らなければ当然抱くであろう疑問を口にした。


「俺の学校は幼稚園から大学までエスカレーターだからな、ルナナも卒業生だし、バンビもいま小学部に通ってる」


 すると妖精は……リアルでラーメン三銃士を紹介されたかのような、微妙な顔つきになる。

 なにか言いたそうに口をモゴモゴさせていたが、けっきょく何も口にせずに黙り込んだ。


 ……コイツの言わんとしていたことは大体想像がつく。

 幼稚園からずっと同じメンバーと過ごしとるのに友達ひとりおらんのかい……と。


 でも妖精なりの心づかいとやらを発揮してくれたんだろう。


 俺は同学年の野郎どもの顔がずらりと並んだ見開きページを目で追っていた。

 証明写真のように、つまんねぇ表情を作った顔、顔、顔。


 大勢いるが、10年以上同じ学び舎にいるヤツらだし、ガキの頃は仲良しのヤツもいたから大体知ってる。


「よし、コイツにしよう」


 ひとりの男子生徒を指さすと、そこをめがけてテュリスがコロコロ転がってきた。


「んーと……華一(はないち)(リン)……なかなかカワイイ顔しとるやん」


 ジャニーズJr.みたいなバブちゃんスマイルを浮かべる男の名は、華一輪。


 女みたいな顔立ちの、さわやか系の優男。

 背格好も女みたいになよっとしてて、小さいんだ。


 ガキの頃はよく遊んだ記憶があるんだが、コイツは男女(おとこおんな)ってよくイジられてた。


 でも中学校にあがる頃にはめきめき頭角を表してきて、リア充の仲間入りを果たしたんだ。


 この写真では黒髪だが、高校にあがったときに茶髪にしたようだ。

 それで入学式のときに、クラスメイトたちがギャアギャア騒いてたのを覚えている。


「まぁ、ええんやない? でもなんでコレにしたん?」


「小学校の頃、仲が良かったんだよ。

 コイツが中学デビューしてからは話すこともなくなったがな。

 それでも話しかけてくれることはあったんだが、少しずつ疎遠になっていってな……でも、今でもたまに目くらいは合うんだ」


「め、目を合わせてくれるって……そんなことにすがらなアカンとは……友達との思い出が極端に無いと、そうなってまうんやろうなぁ……」


「いちいちうるせぇなぁ」


「もしかして旦那、女の子から挨拶されただけで自分が好かれてると勘違いしてきたんちゃう?」


 返事のかわりに舌打ちを返してやると、


「やっぱり、あったんや……こりゃ、かなりの重症やでぇ……」


 テュリスはまるで、法外な治療費をふっかける無免許医にも見放されたかのように、がっくりと肩を落とした。


「もういいじゃねぇか、そんな過去のことは。

 それにコイツは目を合わせてくれるだけじゃねぇ、クラスも同じだし、男女ともに人気がある。

 俺の恋の手先としては適任だ」


「手先やのうて、友達やって」


「似たようなもんじゃねぇか。さぁて、さっそく覗いてみるとするか」


 テュリスはなぜか驚いたように、アルバムから跳ね起きた。


「え!? もしかして、男の部屋を視るつもりなん!?」


「当たり前だろ、また向こうから話しかけて来たくなるネタを仕入れなくちゃな」


「そんなんせんでも普通に話かけりゃええやん……あくまで話しかけられることにこだわる旦那のその変なプライドは一体なんなん……?」


 さも面倒くさそうに首を振り、哀れみにも似た視線を投げかけてくる妖精。


 そんな身の程知らずを見るような瞳をすんなよ……俺は高望みしてる行き遅れの婚活女かよ。


「……別にいいだろ、ある力を使って何が悪い。それに男だからって覗けないわけじゃないんだろ?」


「チーターの力は男女問わずやけど……まぁええわ、『視て』みよか」


 妖精はプーンと飛んできて、すでにホームポジションになりつつある俺の肩に止まった。

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