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「キミ……! そうまでして勝ちたいの? 最低っ!」


「そんなこと……やめてくださぁい!」


 リンとシキが怒りに満ちた表情で睨みつけているが、フクミはわざと挑発するように瞳をグルグルと回す。


「ハァア? そんなことって、何言ってんの? 意味わかんね。

 ネット配信ってのはさ、エロでもグロでも暴力でも……目立ちさえすればナニやってもいい世界なんだって……!

 こんな大勢が見てる前で女教師を剥けるなんて、最高に目立っちゃうよね!

 こんなチャンス、滅多にないよ!

 やってのければ、さらに多くのリスナーたちが崇めてくれるんだ!

 そこに痺れる憧れるぅ! ってね!

 ヒャーッハッハッハハッハッハ!

 ヒャーッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」


 この外道……!

 いくら小言のウザい先生とはいえ、女を泣かせようとするのは、許せねぇ……!

 ブッ飛ばす……! もう負けでもかまわねぇから、ブッ飛ばしてやる……!!


 しかし、俺の怒りは不完全燃焼で終わる。


「ウヒャアーッヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアグゥ!?」


 場を支配していた高笑いは、グルグルと回転しながら飛んできたヌンチャクによって強制中断させられた。

 フクオは目玉を剥き出しにしたまま白目になり、かくんと首を折る。


「……目立とうとするのは、栄光をはき違えた愚か者の考えだ」


 なにやら名言っぽいことをつぶやきながらステージあがったのは、リッコだった。

 投げつけたであろうヌンチャクを拾い上げている。


 ガチャン! と何かが外れるような音がして、フクオとフミミの乗るソファーが揺れた。


 狂気のショータイムに邪魔が入り、シラけたリスナーが一気に俺に票を投じたんだ。

 俺はすでに、20万票を獲得していた。


 直後、バシュッ! とスプレーが噴出するような音とともに、ソファーが後退する。


 カミナリを怖がる子供のように縮こまるフミミ。

 フクオは無反応。それどころではない様子で、口の端から泡を垂らしている。


「おっと!」


 リッコはすかさず手を伸ばし、フミミのスーツの襟を掴んで引っ張りあげた。


 首根っこをつままれた猫のように、「ふみゅう!?」と片手で吊り下げられるフミミ。

 どうやら予想外の出来事には素が出てしまうようだ。


 フクオだけを乗せたソファは、艦船のカタパルトのような加速で床のレールを滑っていく。

 そして……衝撃波とともに部室の外へと飛び出していった……!


 ズバシュウゥゥゥゥゥ……ン!!


 小さくなっていく空飛ぶ椅子にあわせて、外で見送っていた観衆の声が、引き潮のように移動する。


 少しして、処刑されている真っ最中のような男の悲鳴が、遠くでこだましていた。

 プールに浸かって意識が戻ったのか、それともヒルに食いつかれ過ぎておかしくなったのか……ま、どっちでもいいけどな……。



 いろいろヤバかったが……俺は、2階もなんとか制覇することができた。

 よく考えたら1階はリン、2階はリンとシキが戦ったようなものなので、俺はなにもしてないような気もするが……まぁいいか。


 俺は、フミミ先生から鍵を受け取る。


「いつも静かで大人しいと思っていた大西シキさんが、本当はあんなに明るい生徒だったなんて……。

 私はそれに気づかず、彼女をかつての私のように、文学少女の型にはめようとしていた……顧問失格ね」


 すっかり落ち込んでいるようだったので帰ってもらってもよかったのだが、


「私との勝負はこれで終わりですが、寿三十郎さんの開部の意思がどれだけ本物か、確かめるために同行します」


 などと言われてしまった。


 はだけた胸元から、マクドナルドのマークを逆さまにしたみたいな谷間がコンニチワしている。

 俺はずっとそっちに気を取られていて、生返事をしていたらリンから思いっきりつねられてしまった。

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