Last words -04
主人公達の設定年齢を変更しました!それに伴い、01を編集しました。
僕が、白鳥が目覚めたことを親達に知らせに行こうとすると、彼女が僕のシャツの裾を引っ張り、縋るような上目使いでこう言った。
「少しの間でいいから、二人切りでいて……」
わかったよ、と僕は呟き、先程まで座っていたパイプ椅子へと再び腰を下ろす。
どうも僕は白鳥に甘いようだ。彼女からのお願いを断ることが出来た記憶が無い。
僕が座るのを待ってから、白鳥はポツポツと話し始めた。
「……あたし、怖いの。今日みたいに、いつ発作が起こって死んじゃうか分からない。それは一年後かも知れないし、一ヶ月後かも知れない、もしかすると明日かも知れないわ。……ねぇ、何のためにあたしは生きているの?どうせなら、もっと丈夫な身体に生まれたかったわよ!いつも皆が楽しそうに鬼ごっこやドッヂボールをやっていても、いつだってあたしは見ているだけ。体育の授業だって、運動会だってそうよ。あたしだって参加したかった!
…ねぇ、あたしは、何のために生きてるの?あたしに、生きている意味なんてあるの?」
彼女の言葉は、次第に慟哭へと変わっていった。心の奥深くから感情と言葉を搾り出して吐き捨てる様に、彼女は言葉を紡ぎ続ける。
その表情は、とても辛そうで、苦しげで、どこか淋しげで。今にも泣きそうなのに、必死に涙を堪えていて。今更になって、僕は彼女の事を理解し切れていなかったんだと思い知らされる。思えば、白鳥がこんな風に感情を剥き出しにしたのは初めてかもしれない。今までの彼女は、どこか皆に対して遠慮しているような感じで、それは僕も例外では無かった様に思う。
そんな彼女を見ていられなくて、それでも僕には何も言えなくて。だって、白鳥が味わった苦しみや悲しみは、僕には分からないから。理解することは出来る。それでも、決して分かることは無い。そんな僕は、軽々しく彼女に言葉なんて掛けられない。
だから、僕はそんな白鳥を優しく抱きしめた。言葉より先に、身体が動いた。目の前で大好きな女の子が泣きそうになっていて、何もしないなんて、男のする事じゃ無い。そうだろ?
―――もう、泣いていいんだ。無理をして、意地張って笑ってなくてもいいんだよ。僕には何も出来ないけど、それでもこの胸ぐらいなら貸してやれる。だから、気が済むまで泣いていいんだ。
そう囁くと、白鳥は静かに、次第に大きな声で泣き始めた。