Last words -02
キリのいいところで区切ったので、今回は結構短いです。
彼女に告白されてから、あっという間に二ヶ月が経過した。
その間に僕と彼女は、お互いの家に遊びに行ったり動物園に行ったりと、そんな楽しい日々を過ごしていた。
何の根拠もなかったけど、そんな楽しい日々が、いつまでも続いていくと思っていた。ううん、その幸せが続くことが当然のことだ、と思っていた。
だから、僕は気が付かなかった……いや違う、気が付かなかったんじゃない、気が付こうとしなかったんだ。
そんな幸せな日常の終焉を告げる足音が、少しずつ迫っていることに。
その日は、よく晴れた日曜日だった。僕と白鳥は近くの水族館に行き、例によってデート。水槽の壁の近くまで泳いで寄ってきたウミガメにはしゃいだり、アシカショーに興奮したりと、白鳥は終始楽しげだった。そして、その笑顔をすぐそばで見続けていることが出来た僕もまた、このデートを楽しんでいた。
日が傾き始めてから数時間が経ち、空が朱に染まり始めた頃。
「また明日、学校で」
白鳥の家の玄関前まで彼女を送って、別れ際にこう言うと、
「今日はありがとうね、伊達君」
語尾にハートマークが付きそうな声でそう言って、彼女は僕の唇に、そっとキスをした。
体感時間で一分間ほど。多分、実際にはそんなに長くなかったのだろう。
彼女も恥ずかしかったのか、頬を朱く染めながら、照れ隠しのように
「じゃ、じゃあ、また明日ね!」
と言って、タタタッと小走りに家の中に入っていってしまった。
彼女が去って行った後も、しばらく僕は呆然と立ち尽くしていた。
「……今のって」
呟きつつ、唇の、先ほど触れ合わされた場所を、そっと指で押さえた。
「…やっぱり、ファーストキス……?」
ファーストキスはレモン味、とか聞くけれど、緊張で味わうどころじゃあなかった。
次回、物語が動きます。