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Last words  作者: 斎藤一樹
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Last words -01

 一年ぐらい前に書いた作品(未公開)のリメイク版です。短期集中連載で、2011年中に完結する予定です。


 世界観をDailyシリーズと共有しており、別のDailyシリーズにもこの作品のキャラが登場します。

 三年前、僕の大切な女の子が死んでしまった。彼女は僕にとって掛け替えの無い親友であり、幼なじみであり、初恋の相手でもあり、そして、

 ……僕の、恋人だった。

 白鳥百合という名前の彼女は、生まれつき心臓が弱く、体育の授業は基本的にいつも見学していた。

 彼女はその年代の女の子にしては珍しく、可愛いというよりも綺麗といった形容が似合う容姿をしていた。身体が弱い、ということも相まって、どこか儚げな印象があった。

 そういったわけもあり、また彼女は誰にでも優しかったので、彼女はクラスのアイドルのような存在だった。

 中学生にもなると、皆異性の事を意識し始める。彼女に告白した男子は数え切れない程いたが(学年の男子の半分ぐらいが告白したのではないだろうか)、彼女が誰かと付き合っているという噂を聞いたものは誰もいなかった。


 そんなある日、僕は彼女と日直で一緒になった。その日の放課後、僕は彼女と二人切りで黒板掃除(日直の仕事)をやっていた。教室には、僕たち二人以外には誰も居ない。

 彼女は僕に色々と話し掛けてくれる。でも僕は照れ臭くて、更に緊張も手伝って「ああ」とか「うん」とか、無愛想な答えしか返すことが出来なかった。

 程なくして、黒板掃除は終わった。僕は黒板消しを置いて、自分の席へ鞄を取りに行こうとした。

 そんな時だった。僕の背中に、声が投げ掛けられた。

「…ねぇ、あたしと話していて、楽しくなかった?」

 その一言に、僕は内心とても慌てた。そんなつもりはない、そう言おうとした。

 しかし、白鳥は僕の言葉を聞かず、更にまた僕に言葉を投げ掛けた。

「…ねぇ、もしかして伊達君って、あたしの事、……キライ?」

「…そんな事は無い!」

 反射的にそう、言葉が口を突いて出ていた。少し、怒鳴るような口調になってしまった。しかし、とっさに出た言葉ではあったが、その実、この言葉は紛れもなく僕の本心である。

「じゃあ、……あたしのこと、」

 白鳥は、その先を口にすることを躊躇うかのように言葉を切り、そして決意したのか、更に言葉を重ねる。

「…………好き?」

 背中越しに見遣ると、彼女は心細げな、そして不安そうな表情でこちらを見ていた。その姿は、拒絶されることを恐れているかのようで。

 振り返り、僕は白鳥に向き直った。嫌いである訳がない。彼女がアイドルのごとき扱いを受けていたのは前に述べた通りである。勿論僕も、彼女に告白こそしていないものの、彼女の事が好きだった。

 だから、彼女に向き直り、その目を見据えて、はっきりと告げる。

「僕は、白鳥のことが……好きだ」

 たぶんこれは、いつまでも決して揺らがない想い。それを言葉に乗せて、彼女へと贈る。

「だ、伊達君!」

 リンゴ飴のように真っ赤になった顔を落ち着けるかのように深呼吸をすると、白鳥は僕の名を呼んだ。そして。

「あたしも、その、伊達君のことが好きです。だから……あたしと、つ、付き合って下さいっ!」

 ……頭の中、ショートするかと思った。


 翌日。朝起きると、すぐに昨日の放課後のことを思い出した。知らず、頬が熱を持った。取り敢えずベッドから抜け出し、着替えを始める。

 白鳥からの告白は、もちろんOKした。

 帰り道は、一緒に並んで歩いた。やっぱり相変わらず僕は照れくさくって、少し不愛想になってしまったけれど、それは彼女も同じみたいで、あまり僕達は会話をしなかった。でも、お互いの手は指と指とを絡ませ合い、しっかりと握られていた。

 そんな、どこか気恥ずかしくて、それでもどこか胸の奥が暖かくなるような心地よさのある沈黙の中で、僕たちは、少なくとも僕は、確かに幸せだったんだ。



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