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東の魔女

キコリさんの衝撃的な過去を知った次の日から、キコリさんはなんだか上の空だった。挨拶しても話しかけても気の抜けた返事しかしない。

散歩中、心配になってアズちゃんに聞いてみた。

「キコリさん大丈夫かな?最近、ぼーっとしてるけど?」

「パパのこと心配なら結婚してあげて。わたしドロシーお姉ちゃんがママがいい」

「いやなに言ってんの?あたしには彼氏いるよ」

「そうなんだ。乗り換えちゃいなよ」

「不誠実なことはしたくないの」

あたしは両手でバッテンポーズを作る。恋人もいるしアズちゃんには悪いけど年齢不詳のひげもじゃ男と結婚は考えられない。散歩から帰ってアズと格闘ごっこして遊んでいるとスマホにメールが届いた。

お金持ちのクラスメイトからパーティの招待状だ。

その子は魔女っぽい雰囲気で町の東に住んでるから東の魔女というあだ名で呼ばれてる。州会議事堂で著名人を呼んだパーティが開催されるみたいで、その招待状だ。彼氏とご一緒にどうぞ、と添えられてる。ダンスをするからパートナーがいるみたいね。豪華なごちそうも出るようだ。じゅるり。

本来、一般人なんかが参加できるわけないんだけど、あのこんちは町の名士でセレブだからクラスメイト全員を招待したみたい。ラインを見るとみんな大喜びしている。しかしあたしは迷っていた。

山を降りてパーティに参加してどこかに泊まって帰るなら2日はバイトを休まないといけない。めんどうだし行かないほうがいいかな。そう思ってたら、差出人が「ドロシーさんもぜひいらしてね」ときたもんだ。それを契機に他のクラスメイトたちがあたしがくることを期待したメールを連投しまくる。あたしってば人気者だもんな。

いくっきゃないかな。キコリさんに話すと遠慮なくどうぞ、ということだ。送迎もしてくれるみたい。パーティ前日、キコリさんはすごいプレゼントをくれた。

「これは妻の着ていたドレスと靴なんだ。アクセサリーもある。もし良かったらパーティで着ててくれないか」

あたしは目を丸くした。エレガントな真っ赤なドレスにルビーの靴だ。エメラルドグリーンの宝石のついたネックレスまである。安っぽいドレスとパチモンの真珠のネックレスで参加しようと思ってたけど、こっちのほうが断然いいな。

「いいんですか?えへへ」

「ぜひお願いするよ。着る人がいないとドレスもさびしいからね」

あたしは俄然、明日のパーティが楽しみになってきた。

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