木こり
あたしの履歴書を先方に送ると採用通知が来た。やったね♩
あたしは1ヶ月山奥のロッジに泊まり込みになるので簡単な着替えと歯ブラシとかを詰めたリュックを用意した。スカートじゃなくてジーンズを持っていくことにする。山だからね。クマとかイノシシに襲われた時に逃げるのにスカートは走りにくい。
指定された場所で待っていると丸太をたくさん積んだトラックがやってきた。もしかしてあれ?あたしの前でトラックは止まる。ヒゲもじゃもじゃの大きな体をした男が降りてくる。よじれた帽子と汚れた作業服を着てる。見るからに山男だ。
あたしは牧場育ちだから似たような風貌の人は見慣れてる。ふつうの子ならびっくりしたかもね。
「こんにちはードロシーです!」
「キコリだ。よろしく。助手席に乗ってくれ」
「はい!」
あたしは助手席に乗り込む。こんな大きい車に乗るのはじめてだからうれしい。
「家に行く前に先に丸太をおろしに行くよ」
「はい!」
トラックが動き出す。
「怖がられたらどうしようかと思ったけど平気みたいで安心したよ」
「牧場育ちなので同じような格好の人は見慣れてます!」
「履歴書に書いてあったね。きみのような子を探してた」
「ご希望にそえて良かったです!」
トラックは製材所で丸太をおろした後、ぐんぐん山奥に入って行った。
「木は高く売れるんですか?」
「まあまあね。住宅需要があるからね」
「何人ぐらいで作業してるんですか?」
「ボクは1人だね」
「えっ!すごっ!力持ちなんですね!」
「1人が好きなだけさ」
トラックは一軒のロッジの前で止まる。あたしはトラックから降りた。すごく立派なロッジだ。お金持ちの別荘みたいな感じ。庭に木製のブランコや滑り台がある。
玄関には魔女の格好をした幼児の銅像があってすっごい可愛い。手にほうきを持ち帽子は金色に塗られていた。キコリさんの趣味だろうか。
キコリさんについてロッジの中に入ると可愛らしい女の子が大きなウサギぬいぐるみの耳をつかんで引きずってくる。
「こんにちはアズです」
「こんにちはドロシーだよ」
あたしは身をかがめてアズに身長を合わせる。リュックからこぶたのぬいぐるみを取り出した。
「これおちかづきのしるしにプレゼント」
「わあ!ブタさんだ!ありがとう!」
ブタを受け取ったアズは頬を紅潮させてよろこぶ。
「ドロシーお姉ちゃん、トトを紹介するね。トト!トト!」
部屋の奥から犬が駆けてくる。ビーグルだ。たしか猟犬でもある。可愛い娘のためにボディガードを雇っているようだ。
「よろしくね、トト!」
「わんわん!」
「みんなでいっしょにあそぼ!」
「がってんだい!」
お友だちにしてもらえたようだ。あたしはアズとトトといろんな遊びをした。積み木やトランプ、ぬいぐるみを使ったおしばい、折り紙、外に出てブランコや滑り台で遊んだ。子供の体力は無尽蔵だ。疲れることを知らない。トトも元気だ。でも、あたしも牧場育ちで体力はある。都会にきてなまった体に喝を入れるにはちょうどいい。あたしとアズはは真っ暗になるまで遊び回った。夕食はキコリさんが絶品のシチューを作ってくれた。
「おいしい!このお肉食べたことない味です!」
「クマさんのお肉だよ。パパが倒したの」
「えー!すごい!熊肉ですか!元気モリモリになります!」
「いっぱい作った。いっぱい食べてくれ」
「はい!」
あたしは遠慮なくたらふく食べた。夕飯後、アズは疲れてソファーで寝てしまった。キコリさんがベッドまで連れていく。トトもついていく。戻ってきたらキコリさんにお礼を言われた。
「アズと遊んでくれてありがとう。とてもよろこんでいたよ。これからもよろしく」
「もちろんです!」
「ところで部屋なんだがアズと一緒の部屋でいいかい?ボクは隣室で寝る」
「どこでもいいですよ。馬小屋でだって寝られます」
じっさい、子供の頃、馬が好きすぎてお産後の雌馬と一緒に馬小屋で寝たことがある。あたしはアズの部屋に向かう。キコリさんを振り返る。
「おやすみキコリさん」
「おやすみ」ドロシー」
ヒゲモジャの口元がほころんだ。




